平成21年度 - 卒業式における学長式辞
麻布大学 理事長・学長
政岡 俊夫
平成21年度の麻布大学及び大学院の卒業式、並びに学位授与式にあたり、学長として一言ご挨拶申し上げます。
先ず、本日ここに学業を修了される皆様に、心よりお喜びを申し上げますと共に、皆様がこれから活躍される社会は、大きな転換期を迎えている、と言うことも申し添えたいと存じます。
我が国を例にとりますと「第三の開国」の真っ只中にあると言われておりますが、外の世界秩序が大きく変わると、それに合わせて国内体制の変革が迫られます。それが「開国」という言葉で表現されており、これまで日本は、この開国を2度経験いたしております。
日本が初めて経験した「第一の開国」は、西洋文明に対して、統一した国民国家をつくる必要に迫られた、幕末維新でありました。また、第二の開国は、第二次世界大戦敗戦後の、我が国の民主化といえるでしょう。
そして現在は、第三の開国と言うべき、グローバル化に遭遇している時代ではないかと、考えております。
今から20年前、世界を二分する象徴であったベルリンの壁が崩壊し、常に東西に分かれて物事が進んでいた地球が、1つとなり、人類は世界観を民族・国家単位から、地球単位、すなわちOne Worldで考えざるを得なくなり、我々人類が見出した答えは、「持続可能な社会の構築」並びに「生物多様性の保存」であります。
人類の歴史において、17世紀後半からの産業革命は、世界の工業化を進展させ、人間の知の地平は広がり、巨万の富が蓄積され、科学技術は人間社会に大きく貢献し、地球上で人間が「君臨」する領域を広げ、現在の繁栄をもたらしております。
しかしこの結果、地球の現状はといえば、俗な言い方をすれば、人間の君臨により、地球が悲鳴をあげていると言う状態に、陥っているといっても過言ではありません。
気候変動、生物多様性の喪失、核戦争の危機、人口爆発、食糧問題など、気づいて見れば、私達は数々のリスクに囲まれて生活しております。
このリスクの軽減が、君達に託された使命であると考えております。
私自身、この先2050年までに、これらのリスクを如何に軽減するかに、地球の未来が、かかっていると思うからであります。
今年の始め、1月3日の朝日新聞の社説は、地球文明、低リスク型へかじ切る年に、と題して2010年を表しております。この社説では、今年開催される二つの国際会議での、政治的意思という資源に注目いたしておりますが、一つは地球温暖化に関する国連機構変動枠組み条約の、第16回締約国会議(COP16)であります。11月にメキシコで開催されますが、地球温暖化防止について、産業革命前からの気温上昇を、2度以内を目標とした、各国の交渉の行方であります。
もう一つは、10月に名古屋で開催されます、国連生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)でありますが、議長国の日本は、2010年以降の国際目標として、「2050年までに、生物多様性を現状より豊かにする」ことを提案すると言われております。
これらの事から考えて、これからの40年は、新たな地球文明を作り出す40年ではないかと考えております。人類は発展の過程で、文明を作り出してきておりますが、これまでは民族とか国家とかの単位で、文明が作られてきた歴史を持っております。
これからの日本は、One Worldの考えのもと、地球文明を作るという新たな作業が、グローバル化という第三の開国となって、押し寄せてきていると捉えることができます。
また、これから創られるであろう文明は、国家を超越し、或いは種をも超越した、「地球倫理」という大きな思想を持った協同体、まさに「共生」を核とした文明が、構築されるものと信じております。
皆様には、この新たな地球文明を創造するという、歴史の歯車を回す一人一人であらん事を祈念し、学長の式辞と致します。
平成22年3月15日 本学百周年記念ホールにて



