麻布大学

大学概要ABOUT

令和2年度

令和2年度入学式における学長告辞

【ご入学おめでとう】
新入生の皆さん、麻布大学へのご入学、誠におめでとうございます。令和二年度、麻布大学入学式は、新型コロナウイルス感染症の、日本国内での蔓延により開催しないことになりました。入学試験も終わり入学式を待ち望んでいたことと思いますが、健康面での安全第一を考えて、たいへん残念ですが、このように決断しました。しかし、入学式はできなくとも、皆さんはこれから新しい学びに取り組み、大きく成長するスタートの入学であることには間違いありません。これからの時を、ともに過ごす私たち教職員は、皆さんの入学を心待ちにしておりました。皆さんのご入学を心よりお祝い申し上げます。

【麻布大学について】
皆さんが入学された麻布大学は、今から百二十九年前の明治二三年に当時の東京市麻布区に開設された『東京獣医講習所』という小さな学校からスタートしました。創立者は輿倉東隆(よくらはるたか)先生です。輿倉先生は、留学を通してご自身が経験した先進諸国の新しい教育を実践するために、帰国後、私財を投じて本校を創設しました。
学校は四年後の明治二七年 に「麻布獣医学校」と改称し、その後、幾多の変遷を経て、場所も移り、これから皆さんが過ごす麻布大学となり、現在では二学部五学科と二つの大学院研究科を擁する、在校生数2492人という自然科学系専門大学となりました。

【麻布大学の建学の精神と教育理念】
さて、これは毎年新入学生にお話ししていますが、麻布大学には創立者が本学を開設した思いを示した『建学の精神』というものがあります。これには創立者が、この学校をどのような目的で、どのような学校にしていきたいか、という気持ちが込められています。本学の『建学の精神』は『学理討究と誠実なる実践』です。我々教職員はこの精神に従い、ここに学ぶ者に『確かな知識を伝え それを裏付ける確かな技術を与える』 ことを教育の目標とする「実学主義」を標榜し、一丸になって皆さんを将来の専門家として育てます。
また本学の理念は(地球共生系―人、動物、環境の共生をめざして)という言葉に表されています。本学の教育や研究は、人や動物の個体の健康に関するものに留まらず、動物やそれを取り囲む生態系と人間社会の接点に生じるいろいろな問題解決のために必要なもの全てを対象としています。この理念を実現するため教職員が、それぞれの教育・研究に取り組んでおります。この結果、これまでに獣医学、動物応用科学、臨床検査技術学、食品生命科学、環境科学の分野に有為な人材を育成し、輩出し、OB,OGは現在、それぞれの分野で活躍中です。

【学生生活の過ごし方】
本日、入学された皆さんはこのような教育環境の中で、これから四年間あるいは六年間、大学院ではそれぞれの年数をこのキャンパスで過ごすことになりますがここでどう過ごしていくか、大事なことをいくつか話しておきます。
まずひとつです。これから始まる基礎教育・教養教育の学びを軽んじないこと。 振り返って下さい。皆さんは大学に自分の夢の実現をするために、そして専門知識や技術を学ぶために入学してきています。

その専門教育をしっかり学ぶために、まず、これから始まる基礎教育と人間の幅を作る教養教育をしっかり学んでください。大学では専門知識や技術をしっかり身につけて貰うために、各学科の皆さんにこれから習得してもらう専門知識を体系的に組み立て、基礎から応用へと専門家になるべく学びが進んでいきます。まず初めの基礎教育での勉強は、専門知識の土台となります。しっかりした土台の上には、さまざまな専門知識を積み重ねることができます。ここでの学びをしっかり身につけると視野が広がり、今まで経験のない問題に当たったときに発揮できる応用力をつけることができるのです。また、社会にはさまざまな人がいます。社会に出ると、皆さんはその人たちとともに広く接することになります。そのため人間としての基礎的教養や倫理観もしっかり学び、身につけて下さい。また、これも忘れないで下さい。社会で生きていく力をつけるには、今まで述べた大学の学びだけではありません。友人との付き合い、部活動、サークル活動、アルバイト、旅行での人との出会いなど、社会的な交流を通した体験も大切なものです。人と出会い、夢を語り合い、同じ目的に向かって協力し合うという、大学時代でなければ経験できない豊かな時間を過ごし成長して下さい。

次です。物事を行うときには優先順位をつけて、まずは行動しましょう。皆さんは、吉田兼好の「徒然草」を古典で学んだと思います。その徒然草の第九十二段で吉田兼好は「人が学ぼうとする時、夜になれば明日の朝があると思い、朝になれば夜があると思う。そのたびに(次の朝に、次の夜に)しっかり勉強しようと心に決めている。しかしこれは実は怠けていることに気づいていないこと」と言っています。吉田兼好の生きた鎌倉時代から、このように言われているのです。皆さんも「あれをやってみようとか、やらなければとか」思ってもつい先に延ばしたくなることが多いかもしれません。しかし時間は有限です。良いと思ったら今すぐ取り掛かること、今日を一生懸命生きることが、大学生活でも社会人になっても大切であるということを忘れないでください。

【麻布未来プロジェクト130】
麻布大学は本年九月で創立一三〇周年を迎えます。そこでこれを機会にこれから皆さんが迎える新しい時代の獣医学、動物科学、生命科学、環境科学を修得できるよう、本学の基盤となる教育改革を実施します。いわゆる麻布未来プロジェクト130の取り組みです。ここに、入学した皆さんに直接関係のある、このプロジェクトの一部をご紹介します。

一つ目は、全学共通の授業科目群のひとつ、地球共生系教育科目群を配当します。みなさんはこれから麻布大学の教育理念である(地球共生系―人、動物、環境の共生をめざして)をテーマに全学共通科目「地球共生論」およびを学びます。各学科での学びが地球共生にどのように活かされているかを学びます。地球共生の概念は持続可能でより良い世界をめざす「SDGs」の概念と共通しており、「地球共生」すなわち、「人、動物、環境の共生」を体系的に学ぶことは麻布大学にしかできない特色ある学びです。また、今あらたな社会としてSociety 5.0が提案されていますが、皆さんが近い将来、巣立つ社会ではさまざまな人とモノをIoTでつなぎ、知識や情報に新たな価値を生み出し、さまざまな課題の解決を目指すようになります。本学でもこれから全学共通科目として皆さんにデータサイエンス科目を学ぶように科目を配置します。どの学科の学生でも、データサイエンスの知識・情報を活用できる「時代を先導する人材」の育成をめざします。そのため大学ではICT環境整備を優先して進めてきました。

二つ目は初年次教育とキャリア教育の充実です。入学後、皆さんの習熟度を測りそれに合った個人個人の学力にあった無理のないクラスで学ぶことができるよう習熟度別授業を導入します。英語はすでに実施していますが、今年度からはほとんどの学科では数学についても始めます。また全学科において初年次から将来社会に出た際に自立するために必要な職業人としての能力を身につけることや、働くことの意義や職業観を学ぶキャリア教育を推進します。皆さんには入学直後からすでに巣立つ社会を意識してもらいます。

三つ目は、各学科の特色を活かした教育を提供します。動物応用科学科の皆さんには「実践的ジェネラリスト育成研究プログラム」、食品生命科学科の皆さんには「食の情報」分野を導入してビッグデータを用いた食のデータサイエンス関連分野のプログラム、また、食品安全管理システムHACCP管理者の養成プログラム、そして環境科学科の皆さんには「未来共生科学×SDGs」のプログラムを導入しています。獣医学科、臨床検査技術学科などのライセンス取得学科の皆さんは全員が四年後、六年後の国家試験合格を勝ち取る取り組みを進めます。

本日、大学院研究科に入学された皆さん、本学は同規模の理系大学の中にあっても研究活動が活発であり、文部科学省による分野別の科研費採択率が非常に高いことはご存知でしょうか。このように高い評価を得ている教員個々人による素晴らしい研究テーマの進行と共に、本学独自のユニークな研究テーマである麻布大学研究ブランドの確立に向けて多くの研究が進行中です。このように教育面ばかりでなく研究面に関しても、しっかりした指導体制が出来ていますので、大学院に入学された皆さんも、これから教員の研究指導の下、積極的に研究に励んでいただけます。

【おわりに】
大学時代は、おそらく人生の中で、自分自身の時間を最も自由に使うことのできる、かけがえのない時となります。大学時代に何を学び、経験し、どのように過ごしてきたかは、皆さんの今後の将来にも関わってくると言っても過言ではありません。こうしてみなさんは数年後には自分自身に大きな付加価値を付けて、巣立ちの時を迎えましょう。

このたび麻布大学は、皆さんを大きな喜びを持ってお迎えしましたが、私たち教職員は、皆さんが卒業されるときに、『麻布大学で学んで本当に良かった』と満足し、『自信と誇り』を持って社会に巣立っていくことができるよう、ご指導することをお約束致します。

本日はおめでとうございます。

令和2年4月
麻布大学長
淺利昌男