麻布大学

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平成28年度

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平成28年度 - 卒業式における学長式辞

本日、平成28年度麻布大学卒業証書及び大学院学位記授与式を挙行するに当たり、関係各位をはじめ多数のご来賓の皆様方のご臨席を賜り、またご家族の皆様方のご列席を頂き、誠に有り難うございます。

本日、学部では、520名、大学院では、18名が麻布大学を卒業されます。今は式に臨み、席に座り、友人の顔を見て、これまでの大学生活で経験したさまざまなことを思い出されていることと思います。講義や実習のこと、試験のこと、部活動・サークル活動のこと、そして夜遅くまで友人と過ごし、語り続けたこと、今日までの出来事はすべて諸君の大切な経験であり、思い出となり、これからの人生の糧になることと思います。そして本日の卒業の日を迎えられました。さぞ、その胸中は、これで大学生生活が終わるという感激と寂しさ、また四月からの新生活に対する期待や不安に満ちていることと思います。しかし、忘れてはいけないのは本日ここに無事この日を迎えることができたのは、ご家族やその他、周囲の方々の温かいご支援があったからこそだということです。もう一度、お世話になった方々に感謝して下さい。

さて、諸君の学ばれたこの麻布大学は古い歴史と伝統があることはご存知でしょう。本学は明治、大正、昭和、平成と続いて今年は創立127年目を歩んでいるところです。戦後、新制大学になり獣医学部発足からすでに70年、生命・環境科学部も、その前身である麻布公衆衛生短期大学発足から50年以上が経っています。古い歴史を持つと言うことは、ここを母校として巣立った多くの先輩が社会にいると言うことです。そして本年度はいよいよ諸君が社会に向かって巣立つ時です。このキャンパスで、人や動物の健康や共存、あるいは、人と自然環境との調和について学び、クラスメートとともに日々模索しながら4年間あるいは6年間、学び続け、お互いに切磋琢磨してきたことと思います。次は実社会において、本学で学んだ専門的な基礎知識や技術を土台に、目標に向かって自立して、生きていくことになります。

昔から人の成長は植物の生長に喩えられてきました。その中で教育はしばしば植物の種に対する水やりや肥料をやることになぞらえます。植物では、一つ一つの異なる潜在的な可能性を持つ「種」が水と肥料を受け、土壌で持続的に成長し、それが将来、開花あるいは実を結ぶという大きな変化につながります。 水も肥料も何れも やらずとも駄目、やり過ぎも植物を悪くします。成長の各段階における適切な時期と適度な量の見極めが重要です。諸君が本学という土壌で成長する間、我々教職員は、諸君とともに、その成長を通して、水や肥料の量と時期を考えながら、生きるための思考力、学ぶ力そして継続する大切さを身につけられるよう指導をしてきました。諸君は、今、ちょうど、降り注ぐ光と十分な水を受け、豊かな土壌に包まれた種から、芽が出て、これから空にすくすくと成長するところで、地上の自然現象に晒され、適応していくところです。これからは 実社会での目標に向かって、好奇心、柔軟性そして粘り強さを適度な水と肥料にして、伸びていって下さい。実社会ではさらに多くのことを経験していきます。

宮沢賢治の詩に『稲作挿話』という作品があります。有名な詩なのでご存じの方も多いと思いますが、この詩では盛岡高等農林学校を卒業した宮沢賢治が花巻農学校で土壌の教師として生徒に米作りを教える場面がうたわれています。戦前の北東北では、現在のように稲の品種改良も進んでいないせいか、農家は毎年のように冷害で悩まされ、米の不作が続き困窮していました。その厳しい自然環境の中、賢治は、畦(あぜ)の中にいて自分の作った稲の生育を不安そうな顔をして見ている生徒に『これからの本当の勉強は義理で教わることではなく、君のように吹雪やわずかの仕事のひまで、泣きながら体に刻んでいく勉強が、まもなくぐんぐん強い芽をふいて、どこまでのびるかわからない、それがこれからの新しい学問の始まりだ』と励ましています。今日の卒業の時に、この言葉を諸君に贈ります。諸君のこれからの長い人生では、何度となくこの少年のような困難に遭遇します。その時、それを『体に刻む経験』として受け入れ、前向きに自分の夢や目標に向かって若々しく挑戦して行ってください。そうすれば、きっとそこから新しく強い芽が伸びていくはずです。

本日、大学院を修了される諸君は、入学から今まで、指導教員の下で、研究に必要な知識や技術を習得し、実験をやってもなかなか思うような結果が出なかったこと、研究発表のために夜遅くまで準備をしたこと、発表の時の緊張感、そして論文の作成・投稿と、受理の知らせを受けて喜んだことなどいろいろあったかと思います。学部生とはまた違う、より自立した研究生活の中、本当に頑張られ、よい経験をしました。諸君は、今、数年前の大学院入学の時と違う自信に満ちていると思います。社会に出てからも今までの経験は生かされます。また、さらに深く研究の道に進まれる時は これからも地図にない新しい道を切り開く、姿勢と意欲を持って挑戦して頂きたいと思います。たいへん期待しています。

さて、今まで卒業後の心構えを述べてきましたが、冒頭にも申し上げたように、こうして、本学を巣立った多くの卒業生が今まさに社会で活躍中であります。卒業生の各界での活躍は本学の誇りであります。卒業生同士の絆の強さが本学の伝統であり、麻布は卒業生の学校とも言われてきました。本日の卒業生の諸君も先輩に続いて、思う存分、力を発揮していただきたいと思います。

最後になりましたが、ご家族の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。在学中は、何かと本学へのご理解とご協力を賜りまして、有り難うございました。高い席から失礼を致しますが、教職員を代表して御礼を申し上げます。 

それでは、新しく旅立ちをされる卒業生諸氏に、あらためて心からお祝いを申し上げるとともに、今後のご活躍をお祈りして、私から卒業の式辞といたします。本日はおめでとうございます。

平成29年3月15日 本学 麻布獣医学園アリーナにて