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平成22年度 - 入学式における学長告辞

麻布大学 理事長・学長 政岡 俊夫 麻布大学 理事長・学長
政岡 俊夫

平成22年度の麻布大学及び大学院の入学式にあたり、学長として一言ご挨拶申し上げます。まずもって、本学は皆さんを共に学ぶ組織の一員として、心より歓迎いたしますとともに、皆さんは本学で学ぶという、強い意思を持って、この式に臨んでいると確信いたしております。

また、本年度は、本学にとりましては記念すべき年でもあります。本学は1890年、明治でいえば23年になりますが、東京の麻布に與倉東隆先生によって設置された「東京獣医講習所」を、創立の起源と致しております。今年はその開設から数えて、120周年目となる記念すべく年となっております。

本学が創立された明治の半ばは、我が国が近代国家へと発展する過程にあって、欧米の知識、技術の輸入が盛んに行われており、獣医畜産分野においても同様でありました。

このような時代背景にあって、当時の獣医学教育の改革においては、理論に加え実践面での充実の重要性にいち早く気づかれた先生は、「最も実地に堪能なる士を養成して以て、是を普く全国に及ぼし、徐々に業の図る時機たりし」と唱えられ、学術教授の基本軸を、理論のみならず、実践面で力のある者の養成を行うために、講習所を開設されております。

本学は、教育が単なる学問としての探求に終わることなく、それを即戦力として実社会に役立てる実学の大切さを説いた、学理を討究し実践を重んじる理念を今に受け継ぎ、現在では、獣医学部は人と動物との係わり、また、生命・環境科学部は、人の健康と環境との調和などの分野における、人類が直面している課題の探求と社会貢献に、教育・研究を介して取り組んでおる事は、皆さんも良く承知いたしている事と存じます。

現在、本学では、地球共生系~人と動物と環境の調和を目指して~を、教育理念といたしており、皆さんには、本学での4年間ないし6年間において、学び、実践し、そして思考する事を、学長として切に望みます。また、そのために本学には、皆さんの周りに多くの教職員の存在があり、施設があり、先輩がいて、仲間がいるという事を忘れないで下さい。

皆さんは、これから先の学生生活においては、夢や希望をもちつつも、若干の不安も持っていることと存じますが、私自身、この混沌とした時代にあって、進むべく道を捜し求めているところであります。現在の社会は、本学が創立された20世紀前半から、この21世紀初頭にかけての100年間に、起きた事を直視し、我々はどのような課題を抱え、そして、どこに向うべきかを考え、あらゆる分野で試行錯誤が行われている時代の、真っ只中にいると言っても、過言ではありません。

例えば、この地球上に存在する、我々人類の人口動態だけを取り上げましても、明治の半ばには僅か16億人の人口でしかなかったものが、100年を経て現在では60億を越す人口となっております。また、2050年には90億人を越すと予想されておりますが、我々人類の祖先が出現し、約20万年かけて、20世紀前半に16億人にとなった人類は、僅か100年で50億人もの増加を見、この先40年で、さらに30億人が増加することとなります。

この人口の増加は、人類の英知、科学の発達がもたらした結果と考えられ、まさに、20世紀から21世紀にかけての科学の発達には、目を見張るものがあり、我々人類に幾多の幸福をもたらしておりますが、その一方で過酷な試練を生じた事も、事実として直視せねばなりません。

科学技術は人間の英知から生み出され、人類の求めに応じて新しい科学技術が生み出される歴史を我々はたどって来ております。この歴史を継承するのは、いまこの場にいる君たちであります。これから先、求められるものは、人類のための科学だけではなく、地球上の全ての生命のための科学である事を、念頭において取り組んでいただきたく存じます。また、生み出された科学技術は、使用する人間の心によって邪悪な道具になる事も、歴史が物語っており、忘れてはなりません。

本学での生活は、長い人生においてはほんの一瞬かもしれませんが、人生において、最も自由で最も多感な時期を本学で過ごされる皆さんには、知を蓄えると同時に、心を磨き、考えて行動する事を切に望み、学長の告辞と致します。

平成22年4月5日  本学百周年記念ホールにて

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