ロードキル展:趣意
2010年1月
現代社会にとって自動車の存在はきわめて大きく、自動車を動かすために原油が輸入され、道路が整備されている。経済に占めるモータリゼーションの存在ははなはだ大きく、社会は自動車を中心に回転している感があるほどである。そして我々は日々その利便性の恩恵にあずかっている。
しかし自動車社会が発達すればするほど問題も派生する。交通事故はどうしても増える。これは社会問題となり、事故を減らすための懸命の努力がなされている。だが、事故は人の事故だけではない。野生動物も交通事故に遭っている。これを「ロードキル」というが、ロードキルに遇った動物は「ゴミ」扱いされ、人知れず処理されている。
ロードキルは人と野生動物のありかたを考える上で重要な問題を提起している。日本列島は人間だけのものではない。人間が住むようになるずっと以前から暮らしてきた野生動物がいる。人間が快適な生活を追求することはよいことだが、それは野生動物に犠牲を強いることだけであってはならないだろう。口先だけで「動物との共存」というのではなく、道路を作るにしても、自動車を運転するにしても、ロードキルをできるだけ少なくする努力がなされるべきであろう。
自動車社会において人と野生動物が共存できるようになるまでの道のりは遙かなものに違いないが、私たちはロードキルの事実を正確に記録することから始めた。そのために大学に近い相模原市と町田市の清掃局に回収されたロードキル個体を調べることにした。驚いたことにわずか二つの市であるにもかかわらず年間300個体もの犠牲者がいることが判明したのである。関東地方の同規模の市町村で、同じようにロードキルが起きているはずである。全国ではどれだけの犠牲が起きているだろう。にもかかわらず、我々はその事実さえ知らない。
そこでこの展示では、ロードキルの事実を知り、その意味を考える機会にすることを目的とした。試料の回収には相模原市と町田市の清掃局にご協力いただいた。試料の標本化は本学野生動物学研究室の学生諸君がおこなった。関係各位に謝意を表したい。
展示企画 麻布大学野生動物学研究室 高槻成紀