麻布大学

卒業生メッセージ(ウェブ版)

人と動物がより良い関係で 生きていける社会をめざして

農学部 生物生産学科 准教授/博士(学術)
国立大学法人 東京農工大学 新村 毅
2005年卒業/神奈川県・桐光学園高等学校出身(取材:2019年12月)

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ドリトル先生に憧れ、動物行動学を志す

 私が小学校低学年のころ、親が買ってくれたドリトル先生シリーズが大好きで、何度も読み返していました。動物と会話ができるというドリトル先生の特殊能力に憧れていた当時、先生のようになることが将来の夢でした。そのころから好んで昆虫採集をしたり、動物を飼ったりするようになり、彼らが何を考えて行動しているのか、興味を持ち始めました。
 高校生になり、動物行動学を深く学びたいという思いが高まっていた時期に、麻布大学の「動物行動管理学研究室」を知りました。行動学を通じて動物たちの心を理解した上で研究を行い、その成果を動物に返すという研究室の方針が自分に合っていると感じ、動物応用科学科に入学。3 年次になり、迷うことなく同研究室に入りました。

学部から大学院にかけて、研究に没頭

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 やはり、研究生活が大学時代の一番の思い出です。研究室にいる動物の管理は学部生が行っており、より良い環境づくりを各自が真剣に考えていたため、学部生同士でぶつかり合うことも時折ありました。その一方で、感動的な動物の出産や、お酒を片手に互いの価値観から恋愛にいたるまで語り明かした夜もあります。そのような喜怒哀楽を通じてできた研究室の仲間との思い出は、何物にも代え難いです。
 そして、研究室にいらっしゃった先生が"放牧型"だったため、自分の発想を基に自由に研究をさせてもらえたことも良かったです。とても器の大きい先生のご指導のもと活発に意見を交わし、自由に探求させていただきました。おかげで「研究はこんなにも面白いものだったのか」と深く味わうことができました。
 学部生の段階で研究者になる意志を固めており、麻布大学大学院の獣医学研究科博士後期課程まで進みました。院生時代も研究が楽しくて仕方がないという状態で、論文をまとめるのも非常にワクワクする作業でした。数多くの執筆を重ねるうち、特例によって早期修了させていただくこととなりました。
 私の経験からいっても、研究者をめざすには研究を思いっきり楽しむことが近道です。また、研究を通じて「自分の人生において、何を成し遂げたいのか?」「どのような研究者が目標か?」と自問することも必要です。大きな情熱と高い志を持って進んでいれば、自ずと人や情報がそれに集まり、夢を実現するための道標になってくれると思います。

今後も動物に成果を返すことができる研究を

 麻布大学には、動物学全般を広く学ぶ土壌があります。言い換えれば、動物を対象とする研究者および研究室がたくさんあるということです。学科を超え、獣医学科の研究室とのコラボレーションも盛んで、骨の強さについては「獣医放射線学研究室」と共同で調べたり、脳の神経系については「実験動物学研究室」で解析したりすることができました。動物に関する多様な技術をベースに、専門分野の異なる方々と議論できたことは、とても貴重な経験でした。
 私の専門である動物行動学は、動物の行動を総合的に理解するため、どのような脳内メカニズムで行動が生じているのか、どのように進化してきたのかなど、明らかにすべき側面が多岐にわたります。行動学のみならず、生理学や遺伝学などさまざまな学問に通じていなければなりません。こうした事柄についても麻布大学で広く学べたのは、自身のアドバンテージとなって現在も生きています。
 麻布大学の先生方とは、私が東京農工大学で教壇に立つ今にいたるまで、ずっと一緒に研究を続けています。ドリトル先生のように動物の心を理解し、会話できるようになりたいという願いも子どものころから一貫して変わっていません。
 その思いは、最近製品化された「母鳥模倣型ロボット」に結実しました。動物との会話を実現するAnimal Computer Interaction(アニマルコンピューターインタラクション)を確立させ、人と動物がより良い関係で生きていける社会が実現できるといいな、と期待に胸を膨らませています。

学びのツール

DSA01451_.jpg採卵鶏の行動学が研究テーマだったのですが、学生時代は日々産卵される卵を食べ、空腹を満たしていました。まさに鶏の追究に生き、鶏に生かされていたように思います。