麻布大学

大学概要ABOUT

入学式における学長告辞

令和3年度入学式における学長告辞

新入生のみなさん、麻布大学へのご入学おめでとうございます。昨年度、挙行できなかった入学式ですが、今年度はこのように、新型コロナウイルスの感染予防のため、健康面での安全第一を考え、規模を縮小して挙行することにしました。みなさんのお顔を見ながら話すことができて良かったと思っています。しかし、このような理由でみなさんのご家族や関係の方がこの式にご列席いただけなかったことは残念ですが、どうぞご理解くださるようお願い申し上げます。

さて、このような形の入学式ですが今日がみなさんにとって大学での新生活のスタート、人間的にも大きく成長するスタートであることは間違いありません。私たち教職員は、みなさんの入学を心待ちにしていました。ご入学を心よりお祝い申し上げます。

みなさんが入学されたこの麻布大学は、今から131年前の明治23年に当時の東京市麻布区に開設された『東京獣医講習所』という小さな学校からスタートしました。創立者は輿倉東隆(よくらはるたか)先生です。輿倉先生は、留学を通してご自身が経験した欧米の進んだ獣医学教育を実践するために、帰国後、当時在職していた東京農林学校(のちの東京大学農学部)の要職を辞して私財を投じこの学校を東京麻布に創設しました。

この「東京獣医講習所」は4年後に「麻布獣医学校」と名前を変え、本化的な教育を始めましたが、戦中、戦後とさまざまな変遷を経て、その学校の場所も、ここ相模原に落ち着き、戦後の高度経済成長期に臨床検査技術学科、環境科学科そして動物応用科学科の前身の学科が、少し遅れて食品生命科学科ができ、現在では2学部5学科と2つの大学院研究科を擁する、在校生総数2,514人という自然科学系専門大学となりました。

これは毎年新入学生にお話ししていますが、どの私立大学にも創立者が学校を開設した時に、この学校をこういう学校にしたいという想いを表した『建学の精神』というものがあります。本学の『建学の精神』は先ほどお話しした與倉先生の言葉にある『学理討究と誠実なる実践』です。私達教職員はこの想いに従い、ここに学ぶ者に『確かな知識を伝え それを裏付ける確かな技術を与える』 ことを教育の目標とする「実学主義」を標榜し、一生懸命皆さんを『将来の専門家』として育てます。また本学の教育理念は、「地球共生系―人、動物、環境の共生をめざして」という言葉に表されています。

本学の教育や研究の対象は、人や動物の個体の健康に関するものに留まらず、動物やそれを取り囲む生態系と人間社会の接点に生じるいろいろな問題解決のために必要なもの全てです。この理念を実現するためそれぞれの学科および研究科で教育・研究に取り組んでいます。

麻布大学に入学してきたみなさんによりよくこれを理解していただくために、創立130周年を迎えた昨年、大学では『麻布未来プロジェクト130』という教育改革のプロジェクトを立ち上げました。その中に、全学共通科目群として「地球共生論」、「地球共生系データサイエンス」および「地球共生系サイエンスワーク」という科目を設け、全学科の学生がこれを学ぶことにしました。この学びを通して(地球共生を考えられる、作り上げられる人)の育成を目指します。地球共生の概念は国連が提唱しているSDGsの概念と共通しており、『人と動物と環境の共生』を体系的に学ぶことは麻布大学にしかできない特色ある学びとなります。

本日入学されたみなさんはこれからそれぞれの年数をこのキャンパスで過ごすことになりますが、みなさんは、大学で新しいことを学ぶことに大きな期待や希望を抱いていることでしょう。しかし一方で「大学の勉強は難しいかもしれない、ついていけるだろうか」という不安を抱えているかもしれません。

本学は理系ですから、教室では講義を受け、試験を受ける、そして屋内、屋外の実習ではその講義内容を実証するために自ら実験を行い、またそれぞれの分野で専門の技術を身につけるためのトレーニングを行うなど、毎日の地道な努力が必要です。さらに大学生になれば、人から言われたことをやるだけではなく、自ら積極的に学び、行動することも要求されます。今後は自分の考えを人前で発表する機会も増えるでしょう。時には理解できなかったり、うまくいかなかったりすることもあるはずです。

中国の哲学者、思想家である孔子の著書の論語のなかで、勉強に向き合うときの参考になる言葉があります。孔子は

これを知る者はこれを好む者に如(し)かず
これを好む者はこれを楽しむ者に如(し)かず

と述べています。この意味は、「ただ知っているだけの人はその事を好きな人にはかなわない。その事を好きな人は、その事を楽しんでいる人にはかなわない」というものです。

学んで知識を得ることは、もちろん重要なことです。しかしそのとき、ただ受け身で講義を聞きながら学ぶ人は、それに興味を持ちさらに意欲的に楽しんで自分から学んでいく人にはかないません。そういう人は誰かに言われる前に、おそらく自分から積極的に学ぼうとするはずです。

孔子が言う 楽しんでいる人とは、たとえば大学での実験研究の場面で 『実験がうまくいかなくても、ただ落ち込むのではなく、どうすればうまくいくかを考えることを楽しいと思える人、ではこうしてみようといろいろ工夫することが楽しいと思える人』のことだと思います。

みなさんはこの先に卒業研究や実習演習など学科によって卒業までにさまざまな教育的な取り組みがありますが、「どんなことがあっても楽しもう、つまり意欲的に向き合おう」という思いがあれば、たとえ困難な状況にあっても新しい解決策が見つかるはずです。そしてなんと言ってもその経験が自分自身を大きく成長させるものになるはずです。

大学時代は、おそらく人生の中で、自分自身の時間を最も自由に使うことのできる、かけがえのない時となります。大学時代に学び、経験し、どのように過ごすかは、みなさんの将来にも関わってくると言っても過言ではありません。みなさんは在学中に、何事も、先ほど申し上げたように意欲を持って楽しみながら経験をより豊かに過ごし、数年後には自分自身に大きな付加価値を付けて、巣立ちの時を迎えましょう。

本日、麻布大学は、皆さんを大きな喜びを持ってお迎えしましたが、私たち教職員は、皆さんが卒業されるときに、『麻布大学で学んで本当に良かった』と満足し、『自信』を持って社会に巣立っていくことができるよう、ご指導することをお約束いたします。

本日はおめでとうございます。

令和3年4月4日
麻布大学長
淺利昌男