麻布大学

大学概要ABOUT

入学式における学長告辞

令和5年度入学式における学長告辞

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。教職員一同、歓迎の意を表するとともに心からお祝いを申し上げます。今年度は、政府による新型コロナウイルス感染症対策もようやく緩和され、多くのご父母の皆さまのご出席の下に、入学式が挙行できることを大変嬉しく思います。ここにいる皆さんはこの数年の間、コロナ禍で不自由な日々を過ごされたことでしょう。本学でも遠隔式授業の充実や対面式を組み合わせたハイブリッド形式の授業にも取り組みながら、昨年度からは通常どおりの対面式の授業形態を基本として実施しております。大学生活は授業だけではありません。友人との交流や課外活動を通じた人間関係、ネットワークの構築が皆さんの生活に非常に大きな意味を持つことが、コロナ禍の生活の中で明らかになりました。新型コロナウイルス感染症の終息までまだしばらく時間がかかるかも知れませんが、皆さんのキャンパスでの諸活動が可能な限り活発にできるよう、我々も努力いたします。どうぞご父母の皆さまも安心して本学キャンパスに送り出していただければと思います。本日が皆さんにとって大学での新生活のスタート、人間的にも大きく成長する大切な時期の始まりです。

 この麻布大学は、1890年に当時の東京市麻布区に開設された『東京獣医講習所』という小さな学校からスタートしました。創立133年の歴史があります。創立者の輿倉東隆(よくらはるたか)先生は、留学を通して、ご自身が経験した欧米の進んだ獣医学教育を実践するために、私財を投じて、この学校を東京麻布に創設しました。この「東京獣医講習所」は4年後に「麻布獣医学校」と名前を変え、本格的な教育を始めましたが、戦中、戦後とさまざまな変遷を経て、最終的にここ相模原に落ち着き、1950年に新制大学として「麻布獣医科大学」を開学、現在では2学部5学科と2つの大学院研究科を擁する、在校生総数約2,500人という自然科学系の大学に発展してまいりました。これが現在の大学名の由来です。来年度からはこれらの5学科に加え、獣医学部に獣医保健看護学科の新設を予定しています。本学も時代の流れに遅れることなく、今後も引き続き教育改革に取り組んでいくつもりです。

 入学時に皆さんに知って欲しいことがあります。私立大学には、創設者が学校開設にあたって、どのような人材を育成したいかなどの理念や気概、願いをうたいあげた「建学の精神」というものがあります。正門を入ったところにある石碑に刻まれておりますが、本学の『建学の精神』は先ほどお話しした與倉先生の言葉にある『学理討究と誠実なる実践』です。私達教職員はこの想いに従い、時代や社会の変化に即した質の高い教育・研究を行い、社会から求められる人材及び社会で活躍できる人材の育成に取り組みます。

本学は、地球共生系~人と動物と環境の共生をめざして~を教育研究の理念とし、生態系と人間社会の接点で生じている諸問題に取り組む若き人材の育成に努めております。本学の教育や研究の対象は、動物や人の個体の健康に関するものに留まらず、動物やそれを取り囲む生態系と人間社会の接点に生じるいろいろな問題解決のために必要なもの全てです。本日入学された皆さんは、これからそれぞれの年数をこのキャンパスで過ごすことになりますが、皆さんは、大学で新しいことを学ぶことに大きな期待や希望を抱いていることでしょう。そんな皆さんに少し本学の取り組みをご紹介したいと思います。1つは文部科学省大学教育再生戦略推進費「知識集約型社会を支える人材育成事業」として全国の大学で唯一採択された「麻布出る杭プログラム」です。本学では、ヒト・動物・環境の持続的健康社会の構築のために世界をリードできる人材の育成を目指しています。我が国では近年、これまでの教育の枠組を超えた実践経験と専門領域横断的に知識を結合させた人材の育成が急がれています。本学のこのプログラムでは、1年生の後期から研究活動を開始することができるプログラムです。所属している学科は関係ありません。自分がやりたいと思った研究に1年生の後期から取り組むことができます。皆さんも是非参加してみてください。

 もう1つは、女性研究者の活躍促進を目的とした文部科学省科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特性対応型)」に採択されたことを受けて、本学におけるダイバーシティを組織的に推進するために、2022年12月からDEI推進センターを開設したことです。DEI推進センターでは、ライフイベント及びワーク・ライフ・バランスに配慮した研究環境の改善やそれに向けた学内の意識改革を図るとともに、女性研究者の裾野拡大、研究力向上等、総合的な支援事業を実施することで、本学で働き学ぶ全ての人がその能力を十分に発揮できる環境の実現を目指しています。日本の社会では、少子高齢化による労働力の減少、人材不足をきっかけに、ダイバーシティに目を向けるようになりました。性別や国籍、年齢などにとらわれず、優秀な人材を確保し、人材育成に繋げる施策です。大学は皆さんに新しい価値や気づきを与える場です。多様性や異質なものを受け入れ、その特性を理解していきましょう。

 本学の特徴は、学生と教員の距離も近く、卒業生との交流も盛んで、同窓も在学生の生活や就職支援に協力してくれています。多くの卒業生が、皆さんが同窓の仲間に加わったことを喜んでおります。我々は全力で皆さんの学びと暮らしを支援することをお約束いたします。授業のことや経済的なことなど、何か困り事がありましたら、その声を私たちに届けてくだい。

 本日、麻布大学は、皆さんを大きな喜びを持ってお迎えしましたが、私たち教職員は、皆さんが卒業されるときに、『麻布大学で本当に良かった』と満足して社会に巣立っていくことを心から願っています。麻布大学での学生生活が、健康で楽しく、実り多きものとなるよう心から祈念して、入学式の式辞といたします。

令和5年4月6日
麻布大学長
川上 泰