麻布大学

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卒業式における学長式辞

令和2年度麻布大学卒業生に贈る言葉

皆さん、ご卒業おめでとう

昨年度から今年度にかけて、大学でも新型コロナウイルス感染症の予防についてさまざまな対策が取られ、皆さんにもご不便をおかけしたかと思いますが、この時期に最終学年を過ごされた皆さんはさらに就職活動、卒業研究、国家試験対策などでご苦労されてきたことと思います。

コロナ禍の影響で昨年度は本日のような卒業式を開くことができませんでした。卒業を迎えた先輩達も残念だったかと思いますが、彼等を指導してきた教職員もたいへん残念に思いました。しかし、今年は引き続き感染予防を考え、規模は小さくしましたが、卒業式を挙行することができ、卒業する皆さんとこうして向き合って、お祝いを直接伝えることができて本当に良かったと思います。

今日は、ただいま報告があったように、学部では521人、大学院研究科では32人の卒業生が無事この日を迎えました。本日この日を皆さんが迎えることができたのは、皆さんの努力もさることながらご家族やその他周囲の方々の陰となり日向になる暖かい励ましやご支援があったからこそではないでしょうか。もう一度それを思い出し、お世話になった方々にも感謝してください。

さて、今日卒業を迎えられた皆さんは、麻布大学で学びながら、仲間と共に、時には愉快に、時にぶつかり、お互い切磋琢磨し過ごしてきました。これからの実社会において、①本学で学んだこと、そして②他者との交わりの中で経験したことが自分の財産になります。例えば、勉強以外であれば、出会った友人や忘れがたいすばらしい思い出、苦い経験などです。

さて、皆さんは日本三大随筆集のひとつである徒然草を知っているかと思います。作者の吉田兼好の生きた時代は西暦1300年代なので鎌倉時代末期からそのあとの南北朝時代ですが、その徒然草の中に『能をつかんとする人』という話があり、それが700年経った今に通じる示唆に富んだものだと思いますので紹介します。

「今、達人と言われる人でも、最初はだれでも未熟で上手ではない。技を磨く、あるいは上達する道は、たとえまだ、未完・未熟であっても自ら人の中に入り、あえて周囲の人に揉まれなさい。他人の中に積極的に飛び込み、そこで批評なり評価を受けなさい、そうした方が上達は早いと言う言葉です。この『能をつかんとする人』の能とは、ここでは芸能をさしていると思いますが、芸能は技術に置き換えられます。この話からは、人は周りに育てられ成長するという、いつの時代も変わらない真理が見えます。私がこれに一つ加えるとすれば、『失敗を恐れず挑みなさい』でしょうか。失敗は若い人の特権、失敗は将来の成功につながると思ってください。

話を大学時代に戻します。人の記憶というものはその大部分がいつしか消えるものです。しかし記憶の中にはかけがえのないものがあります。最ものびのび自然に生きた人生の春の記憶、すなわち青春の記憶は今後、皆さんの心の中に深く刻まれ、かけがえのないものになります。皆さんがここで過ごした日々がまさにその時だったのです。麻布大学でそのかけがえのない日々を共に過ごし、培った友情をこれからもどうぞ大切にしていってください。

最後になりますが、振り返ってみれば、朝夕になじんだキャンパスの風景に包まれ、春夏秋冬と過ごす中で築いた友情、そして恩師との繋がり、ともに今日がひとつの区切りになります。

みなさんには明日へ向けて広がる夢と少しの不安が同居する今日の船出ですが、先ほど話した前向きな姿勢を忘れずに、今後、みなさんが幸せな人生を歩むよう心から祈り、学長の式辞とします。

ご卒業おめでとう!

令和3年3月15日
麻布大学学長
浅利 昌男