麻布大学

大学概要ABOUT

卒業式における学長式辞

 本日、令和4年度、麻布大学獣医学部、生命・環境科学部、大学院獣医学研究科そして環境保健学研究科の学位記授与式を挙行できますことは誠に喜ばしく、心からお祝い申し上げます。本日、学位記を授与された皆さん、本当におめでとうございます。コロナ禍で不自由が多かった日々を乗り越え、無事に今日の日を迎えられたこと、学長として心からお祝い申し上げます。卒業生の皆さんには、ご支援くださったご家族をはじめ、指導教員、先輩、同期の仲間、後輩など、多くのお世話になった方々への感謝の気持ちを伝えることを忘れないで欲しいと思います。

 ご父母の皆様、ご子息、ご息女のご卒業、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。今年はようやくご父母の皆さまにもご出席いただき、卒業式を挙行できることを大変嬉しく思います。お子様方の在学中は、本学へのご理解とご協力を賜りまして、誠に有り難うございました。教職員を代表して心より御礼を申し上げます。

 まだまだ油断はできないものの、ようやく新型コロナ感染症の対策も緩和され、コロナ禍前の日常生活を取り戻すことができました。皆さんは、これからそれぞれの道にお進みになり、新たな環境での生活が始まります。社会では、様々な分野で解決すべき課題が山積しており、皆さんは非常に厳しい環境に身を投じることになります。物価高騰や気候変動、感染症の蔓延、そしてロシアによるウクライナへの軍事侵攻など、「平和な社会」を根底から揺るがす深刻な事態が毎日のように報道され、目まぐるしく変化する社会に不安を感じている方もいるかも知れません。これからはこれまで以上に「我慢」や「忍耐」という経験を積むことでしょう。しかしながら、皆さんが夢を持ち、その夢をいかにして叶えるのかを強く心に思い描けば、必ず道は開けます。「我慢」や「忍耐」も、結果としてはすばらしい経験となって、本当の意味での実力になることでしょう。これからの時代は「リテラシー」と「コンピテンシー」が非常に重要な役割を果たします。これまで学生生活で学んで来た知識や、これから先の人生で得られる経験が皆さんを格段に豊かな人間にしてくれることは間違いありません。皆さんには、社会の要請をしっかりと受け止め、真正面から挑戦し、社会に必要とされる人物になって欲しいと願っています。ポジティブな気持ちを忘れずに頑張ってください。皆さんのご活躍を心から応援しております。

 ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授であるリンダ・グラットン氏は、新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以来、この世界的な惨事がどれほど私たちの働き方に影響をもたらすのか、つぶさに研究されてきました。世界中の企業が新しい働き方を模索する中、学生や経営者からは「どのように働き方を改革していくべきなのか」といった質問を頻繁に受けるようになったそうです。こうした人たちの疑問にこたえようと、『リデザイン・ワーク、新しい働き方』という書籍を執筆されました。まさにパンデミックは働き方を再設計するきっかけをもたらしたと思います。これからは今までとは違った新しい働き方のできる時代に入ります。言葉の上で理論を論ずるだけでは終わらせず、実際に新しいものを生み出し、それを実行に移していきましょう。現代はより良いプログラムづくりにテクノロジーが後押しをしてくれます。多様なコンテンツにアクセスでき、多様な学び方が許容されるなど、いずれもテクノロジーの利用によって実現できる時代です。皆さんの力で働き方も大きく変化させていきましょう。

 少し麻布大学の今後についてお話をさせていただきます。皆さんご存知のとおり、日本の社会では、少子高齢化による労働力の減少、人材不足がきっかけに、ダイバーシティに目を向けるようになりました。性別や国籍、年齢などにとらわれず、優秀な人材を確保し、能力を存分に発揮してもらうことが可能になるのです。人材育成にも繋がる施策です。多様性や異質なものを受け入れ、その特性を理解することが大切です。私は学長として本学でもダイバーシティを推進していこうと決意しています。女性のみならず誰もが働きやすい環境を目指して環境改善を進めていこうと思います。さらに、令和6年度からは、獣医保健看護学科も新設して、本学も時代に合った姿になるべく改革を進めています。麻布大学も時代の流れに遅れることなく、今後も引き続き教育改革に取り組んでいくつもりです。皆さんもこれからの麻布大学の進化を楽しみにしていてください。

 社会では、これまで本学を巣立った数多くの同窓生が活躍しています。同窓生の活躍は本学のかけがえのない誇りです。本学の同窓生はきっと皆さんを支援してくれることは間違いありません。思えば、私も35年前に本学を卒業と同時に麻布大学に奉職し、現在に至っております。この間、大学という小さな括りの中だけでも、その後の人生を左右する大きな出会いが数多くありました。皆さんも、これから多くの人と出会い、喜びや悲しみを分かち合いながら素晴らしい人間に成長して欲しいと願っています。

 最後に新しい旅立ちをされる卒業生の皆さんに、改めて心からお祝いを申し上げるとともに、今後のご活躍と末永いご多幸をお祈りして、私からの式辞といたします。

令和5年3月15日
麻布大学学長
川上 泰