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卒業式における学長式辞

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平成30年度 - 卒業式における学長式辞

本日、ここに多くのご来賓にご臨席をいただき、平成30年度麻布大学獣医学部、生命・環境科学部、大学院獣医学研究科および環境保健学研究科の卒業証書・学位記授与式を挙行できますことは喜びに堪えません。

春山は笑う如く、夏山は滴る如く、秋山は粧う如く、冬山は眠る如し、と申します。丹沢の山々も冬の眠りから覚めて、笑う春になりました。丹沢の四季を感じながら、相模原のキャンパスで学び過ごした皆さんが無事に卒業式を迎えたことは大変喜ばしく、心よりお祝い申し上げます。卒業おめでとう。今日の良き日を迎えられたのは自分自身の努力はもちろんのこと、ご家族をはじめ周囲の方々のたゆまない応援と支援があったことをどうぞ忘れないでください。

ご父母あるいはご関係の皆様、本日はおめでとうございます。心よりお慶びを申し上げます。卒業までの間、本学に賜りましたご支援とご協力に改めまして感謝申し上げます。
先ほどの学事報告にもありましたように、本日、学部では512人、大学院では24人の皆さんが本学を卒業されます。皆さんは、平成最後の麻布大学の卒業生として、これから新しい世界に出発します。
今、この麻布獣医学園アリーナに座るひとりひとりの胸の中には、学生生活の様々な思い出が去来しているのではないでしょうか。 楽しかったことばかりではなく、つらかったこともたくさんあったことでしょう。しかし本学で出会い、経験したすべてのことが、今の皆さんの力になっていっているはずです。どんな些細なことも無駄になっていることは1つもありません。

本学の建学の精神は【学理の討究と誠実なる実践】です。麻布大学の創設者である與倉東隆先生の言葉です。私たちは「学理を討究し実践を重んじる誠実なる校風を受け継ぎ、今は人と動物の共存及び、人と自然環境との調和の途を探求することを使命にこの建学の精神を、現在に繋いでいます。
皆さんはこの建学の精神のもと本学で学び、そして私たち教員も指導に力を注いでまいりました。
「啐啄同時」という禅の言葉があります。鳥の卵が孵化するとき、雛は内側から鳴きながら殻をつつきます。これを「啐」といいます。親鳥は雛の「啐」に素早く応じて外側から殻をつつきます。これを「啄」といいます。「啐」と「啄」が絶妙なタイミングで行われることで、雛は無事に誕生します。このことから啐啄同時は、学ぶ者の意欲に、すかさず応えて教えることを意味します。
【学理の討究と誠実なる実践】が「啐啄同時」で行われてきたことで、皆さんは新しい世界に飛び込む力を付けてきたと思っています。「啐啄同時」は、学問だけでなく「またとない機会」そして「好機到来」を意味する言葉でもあります。

研究室の先輩の一言が背中を押してくれた、サークルで悩んでいるときにヒントをくれる先輩がいた、困ったときに声をかけてくれる友人がいた、これらは皆さんの「啐啄同時」です。
実は皆さんの大先輩である本学卒業生、故増井光子先生の好きな言葉がこの「啐啄同時」でした。ご存知のとおり、増井光子先生は上野動物園で初めての女性獣医師となり、上野動物園、多摩動物園、そしてよこはまズーラシアの園長を勤めた方です。
増井光子先生は本学を卒業後、上野動物園で働きたい一心で「上野動物園で仕事がしたい」と当時の園長に直訴しました。 この時、増井光子先生は上野動物園が東京都営であることを知らなかったそうです。当然断られますが、その熱意が伝わりその後、臨時職員として採用され、最終的には上野動物園の園長も勤めました。傍から見れば大変無謀なことのように思えますが、信念と熱意をもって行動することは、人の心を動かし、チャンスを連れてくるということにつながることがよくわかります。
前例がない、まだ経験がないからと、ためらう前に行動することもこれからの時代では大切なことです。「とにかく、強い願いを持ち続けていれば、降って湧いたようにチャンスがやってくるものです。そのとき、取越し苦労などしないで、躊躇なく勇敢に実行を決心することです。」
これは西堀栄三郎という科学者であり、第一次南極越冬隊隊員であり、アインシュタインの通訳も勤めた通訳者でもあった人の言葉です。

新しい世界に飛び込み、新しい時代を生きていく皆さんには、希望だけでなく、たくさんの不安もあるでしょう。自分のやりたいことができるのか、自分の考えが本当に正しいかどうかわからなくなることもあるでしょう。しかし失敗を恐れずやってみてください。
たとえ失敗をしても、必ず得られるものがあるはずです。そして願いを持ち続けていくことで、「啐啄同時」という新たなチャンスがやってくるはずです。

今後皆さんは、誇りある麻布大学OB,OGとしてそれぞれの分野で、人々の役に立ち、人や動物を助ける人材となって活躍いただくことを学長として期待します。

最後に皆さんが充実した人生を送られることを心より願い、学長の式辞といたします。

平成31年3月15日 麻布大学学長 浅利昌男