麻布大学

卒業生メッセージ(ウェブ版)

自ら進んで学び続けるとともに、
羽ばたく後輩たちを見守りたい

臨床検査技師

独立行政法人国立病院機構 相模原病院 勤務 井田 貴明

後輩の成長する姿を見ることが、仕事の喜び

井田さん画像私が所属する「国立病院機構関東信越グループ」で異動があり、検体検査主任としてこちらの「相模原病院」に着任し、半年以上が過ぎました。国立病院機構では、大卒者は勤務期間が5年を超えると主任昇任試験を受けることができ、合格すると昇任候補者名簿に登録されます。28歳で主任になったのは、最年少と聞いています。

現在は主に、血液検査を担当しています。赤血球や白血球、血小板の数や質を調べるなど、血液の細胞を見る検査に携わっています。血が固まりやすいかどうかを見る凝固機能検査も、私が行う血液検査のひとつです。こちらに異動する前は横浜市戸塚区にある「横浜医療センター」で働いており、そこでは血液検査のほかに輸血検査や生化学検査、免疫検査も行っていました。

主任になる前から後進の育成には力を入れており、自分の持つスキルを後輩に教え、その成長を感じる際、もっともやりがいを感じます。血液検査中、血液細胞を顕微鏡で見る際には、ある種のスキルが必要とされます。細胞の形は判断基準が微妙だからです。その難しいニュアンスを後輩に伝えられたときの達成感たるや、格別です。

また、以前の職場で後輩が行う輸血検査に立ち会ったときのことです。検査用試験管に入れた血液の凝集反応チェックで、難しいとされる凝集判定を後輩がこなせていたときには、一緒に喜びました。後輩たちとは比較的年が近いためお互いに共感しやすく、教えやすい雰囲気を醸し出しているのかもしれません。

得意分野があるほど、即戦力になる

井田さん画像血液細胞の鑑別については、実は大学在学中からやっていました。標本(プレパラート)作製から、組織や細胞に色を入れる染色のやり方、白血球の数え方まで、当時「病理学研究室」にいらっしゃった先生が教えてくださいました。そのため、就職して間もない時期から血液検査を任せてもらえました。

また、所属していた研究室が病理をテーマにしていたため、ある症状の場合、体のどの部位にどういう異常が出るかを学んでいました。不調を訴える患者さんのデータを見て、基準外の数値から病態を見抜くような訓練を重ねました。大学時代に身につけた技術や知識は、現在の仕事に携わる上での力になっています。

大学在学中、決まったカリキュラムしか勉強していなければ、臨床検査技師の国家試験に受かったとしても、実際に現場で働くには未熟だと思います。在学中に自分の得意分野を見つけておき、就職した後は得意分野以外にも視野を広げ、より深く習熟する構えでいるべきです。現場での即戦力になりますし、やりがいを持って仕事に取り組めます。自分の経験から、強くそう感じます。

自主的な学びは、就職後も続けるべし

就職した現在でも、勉強は自主的に行っています。「神奈川県臨床検査技師会」や「日本臨床衛生検査技師会」がおのおの主催するセミナーには、できるだけ参加するようにしています。例えば、神奈川県臨床検査技師会には12の専門ごとに分かれた「研究班」があり、教育の場を提供しています。研究班の中で話をすると、「実は私も麻布大学の卒業生です」という方が結構いらっしゃいます。同窓のよしみですぐ打ち解け合い、おかげさまで意見交換できる関係性が築けています。専門的な部門で働く先輩から、その方の体験談を通して勉強させていただくこともしばしばです。

日々の研鑽(けんさん)は私たちの職業にも当然当てはまりますが、特に臨床検査技師になって2年目のころ、血液検査担当が私ひとりになり、学ばざるを得ない状況に置かれたことがありました。前述したような勉強会に出向いて新しい情報を集めたり、知識を共有してくれる人脈を築いたりと、貪欲に吸収しました。この経験が、今回の主任職昇任を支えているのだと思います。

医療は日進月歩で発展するため、自ら学ぶ姿勢は必要不可欠です。これからも主体性を持ち、羽ばたく後進の姿を見守り続けたいと思います。