麻布大学

卒業生メッセージ(ウェブ版)

研究室で心構えをつくり、現場でさらにスキルアップ

臨床検査技師
国立研究開発法人 国立がん研究センター 東病院病理・臨床検査科 中西 愛弓
2015年卒業/千葉県立八千代高等学校出身 (取材:2019年12月)

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次第に高まっていった臨床検査技師への興味

 臨床検査技師が行う検査は、「生理検査」「生体検査」「検体検査」に大きく分けることができます。私は超音波や心電図、肺機能などを調べる生理検査(生理機能検査)全般に携わっています。
 超音波検査では、腹部・乳腺・下肢の領域を担当しています。中でも腹部超音波検査と乳腺超音波検査においては、患者さんの既往歴や紹介元の病院での検査結果、当院に来るまでのいきさつを確認します。当院で経過観察している場合は、前回の検査結果を踏まえて検査を行います。治療前の患者さんについては、良性か悪性かの鑑別を行っており、悪性だった場合は腫瘍の大きさや浸潤範囲、転移の有無などを観察します。検査後にはPCに超音波画像を保存して所見を記載し、電子カルテから閲覧できるようにする――以上が、一連の業務内容です。
 臨床検査技師という職種を知ったのは、中学生のころの職業体験でした。看護師の仕事を見るため検査室に入った際、検査を専門に行う職種があることに気づき、興味を持ちました。
 高校入学後はこれといった将来像はなかったのですが、いくつかの大学のオープンキャンパスで一番興味を持てたのは、やはり臨床検査にかかわる学科でした。麻布大学の臨床検査技術学科の良さを語る友人の勧めもあり、この学科に入学しました。

研究室での心構えは、今に生かされている

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 大学では「微生物学研究室」に所属し、卒業論文「市販生食用馬肉における腸内細菌科菌群の汚染状況および疫学的検討」に取り組んでいました。当時は牛の生肉による食中毒「O157」が騒がれており、牛肉の生食の規制が厳しくなったときでした。比較的規制が緩い生食用馬肉の需要が代わりに増加したため、馬肉を使った腸内細菌科菌群の分布や薬剤耐性についての実験を重ねていました。
 実験では菌を扱うため、1か月前からスケジュールを組み、細菌の培養時間(48時間もしくは24時間)を考慮して開始日から片付けを含む終了日まで、細かく段取りを進めました。また、実験の内容に合わせ、使用するシャーレやピペットの数、培養に必要な培地の量を計算し、不足がないように発注と確保を行っていました。おかげで、現在も作業は完了した状態から逆算し、計画的に取り組めています。
 研究室ではさらに、初めての作業や実験に関しては必ず手順を聞き、実際に行ったことを確認していただいていました。こうして先生や研究室生との間で「報連相(報告・連絡・相談)」を徹底するよう教わったことも、今に生かされています。職場では「ISO15189」という国際的な品質マネジメントシステムに準じて手順書や指導内容が決まっているため、通ずるものがあったと感じます。

臨床検査技師として、さらにスキルアップを

 仕事のやりがいを感じるのは、患者さんとコミュニケーションをとっているときです。検査させていただいた患者さんから「ありがとう」といわれたり、採血時に「痛くなかったよ」といわれたりすることが多く、患者さんの明るいお声掛けから、逆に元気をもらえることも少なくありません。
 そんな患者さんの検査に携わっていることを誇りに思う反面、責任を感じることも多いです。臨床検査技師が行うどの検査も、患者さんの診断や治療に深くかかわってくるからです。血液検査データのほか、CT・MRI・マンモグラフィ・内視鏡超音波などの画像データの検査結果を迅速かつ正確に医師に伝えるために緊張感を持ち、時には試行錯誤し、日々精進しています。特に腫瘍においては病理診断が最終的な確定診断となるため、生体検査や手術後の報告書にもしっかり目を通すようにしています。ほかにも、医療の早い進歩に追いつくため、常にアンテナを張っておくことも必要です。
 こうしたことから、専門学会で知識を得る以外に、超音波検査士という認定資格や心電図検査に関する資格を得るなどして、さらなるスキルアップをはかりたいと考えています。

学びのツール

med202001_13.png自宅から大学までの通学中、電車の中で気軽に国家試験の勉強ができるスマートフォンのアプリが重宝しました。過去問を解いたり、勉強時間を記録したりしていました。