麻布大学

卒業生メッセージ(ウェブ版)

学んだ知識は、日々の診断で大きなウエイトを占めます

動物病院 院長
苅谷動物病院グループ 江東総合病院 苅谷 卓郎
2012年卒業/東京都・海城中学高等学校出身 (取材:2021年2月)

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生き物たちを身近に感じながら過ごした少年時代

 私は今、東京東部と千葉県市川市に5つの病院を展開する「苅谷動物病院グループ」のひとつ、「江東総合病院」で院長を務めています。グループの現会長である実父の働く姿を物心がつくころから見ていたため、自然と獣医師を志すようになりました。私の少年時代、身の回りにはごく普通に生き物たちであふれていました。当時の自宅の構造はまさに「家の中に動物病院がある」という造りでしたので、患者さんとその飼い主さまが来院しているところを毎日のように見ていました。また、動物好きの家系からか、虫好きの父に対し、祖父はサルを飼っていました。種を問わずさまざまな生き物が集まっていたのが、我が家の日常の風景でした。

レントゲンの読影に憧れ、研究室に所属

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 麻布大学では、「獣医放射線学研究室」に所属していました。幼少から獣医師が行うレントゲンの読影に憧れており、自分もそのスキルを身につけたいと思っていたのが、入室の動機です。子供心に、レントゲンの影から獣医師が病気を推定する様子を「かっこいい」と感じていたのです。そして大学へ入学後、当院での診療業務の一端を時折手伝う中で、レントゲンフィルムの読影について小耳に挟むことがありました。そのたびにやはりこの分野に対し、自分は依然として高い関心を持っていることを再認識し、研究の方向性が定まりました。
 大学在学当時、獣医放射線学研究室には画像診断の権威ともいうべき先生がいらっしゃいました。この先生のもとで学んだことは数えきれないほどありますが、中でも一番思い出に残っているのは、研究室が主催したレントゲンの読影会です。一般の獣医師の方を数十人お招きし、判断が難しいレントゲンの所見について研究室の先生も入り混じって皆で読み取り、議論し合うという内容でした。レントゲンから見えた影を表現する専門用語を覚えるとともに、病気との関連性を新たに知る場となり、大変勉強になったことを覚えています。
 こうして研究室で学んだレントゲンやエコーに関する知識は、日々の診断をつける際に大きなウエイトを占めており、身につけた知識を使わない日はないといっても過言ではありません。研究室の恩師には、今でも心から感謝しています。また、麻布大学は規模が小さくアットホームなだけに、卒業後も教員や学生同士の絆があります。麻布大学で獣医師をめざし勉強しようとしているみなさんには、大学時代にいろいろな先生や学生とつながりを持っておくほうがよいと、私の経験からも申し添えておきます。

飼い主さまに頼られる存在であり続けたい

 現在は当院の一般診療に加え、グループ内の他院のマネジメントもあわせて行っています。診療に携わる中、患者さんが亡くなってしまったときには私も残念に思う反面、飼い主さまが新たに迎え入れた"家族"を連れて再来院されたときには、信頼関係を築くことができたと感じます。
 飼い主さまから頼っていただけるよう、当グループでは常に動物とそのご家族の気持ちに寄り添う診療を心掛け、ハードとソフトの両面からの充実をはかっています。夜間救急対応はもちろん、当グループではCTセンターや先進的な犬猫用献血システムを擁し、時には各科のスペシャリストを中心にスタッフが集まってハイレベルでのチーム医療に取り組むなど、動物のことを第一に考える「総合動物病院」づくりに努めています。
 飼い主さまから感謝のお手紙をいただくことも、仕事のやりがいのひとつです。各院へ届いたお手紙をグループ内のスタッフ間で共有できるシステムを構築しており、スタッフ一同よりよい診療に向けて尽力しています。
 今後の目標は、動物医療従事者の社会的地位の向上です。2019年に「愛玩動物看護師法」が制定され、動物看護師が国家資格化されるなど状況は改善されつつあるものの、動物医療の先進国とされる欧米に比べると、日本は後れを取っているといわざるを得ないのが実情です。アメリカでは既に新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進んでいますが、例えば首都・ワシントンDCで優先順位が高いのは医療従事者であり、その中には獣医療も含まれています。日本でそのように認知されるためにも、やはり日々の診療を着実に行い続けることが欠かせません。今後も飼い主さまにいつも頼っていただける存在をめざし、努力を重ね続ける所存です。

学びのツール

v_kariya03_.jpgデジタル化に伴い、今使うことはほぼないのですが、学生時代はレントゲンの読影用に「シャーカステン」を多用していました。麻布大学附属動物病院の撮影フィルムを収蔵する作業補助を、同時に思い出します。