麻布大学

卒業生メッセージ(ウェブ版)

小動物臨床の道を歩みながら にぎやかで楽しい家族形成を

獣医師
髙梨 真弓
たかなし動物病院 獣医師
2010年卒業/東京都・鷗友学園女子高等学校出身

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実験と臨床、両方に携われる研究室を選択

 麻布大学に入学してから研究室に入るころまで、私には病気と遺伝子治療をうまく結び付けられるような期待がありました。そのため、内科に加えて遺伝子の実験にも力を入れていた「内科学第二研究室(現在の「小動物内科学研究室」の前身)」に興味を持ち、入室を決めました。この研究室では、麻布大学附属動物病院での診療を見たり、院内で患者さんと触れ合ったりできました。こうして臨床にかかわれることも、当研究室を選ぶ決め手となりました。
 卒業論文は、犬の肝細胞がんとリンパ腫において、PTENというがん抑制遺伝子がどのように変化するかをみる研究でした。定性と定量の両方に軸足をおき、定性的には変異があるかないか、定量的には変異がある場合どれぐらいの量になっているかを観察しました。専門的な内容だったため、教科書上でも手技上でも、かなり深く学ぶ必要がありました。
 当時行っていた研究は、今勤める病院での診療にもつながる内容です。腫瘍や感染症の遺伝子検査は、臨床の現場でも日常的に取り入れることが多く、大学時代の苦労の賜物か遺伝子の理論は理解できているので、検査結果をオーナー様に伝える際は説明がしやすいです。

研究を視野に入れるも、臨床の道を進む

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 所属していた研究室の影響もあり、将来は研究と臨床の両方に携わりたいと考えていましたが、一度しっかりと小動物臨床の現場で勉強する必要性を感じ、卒業後は腫瘍科専門の病院で働くことにしました。3年をめどにその病院に勤め、その後は遺伝子関連の研究職に就く流れを想定していたのですが、小動物臨床の奥深さに触れ、元気になって帰っていくワンちゃんネコちゃんやそれを喜ぶオーナーさんを「よかった」という気持ちで眺めているうちに、気づけば10年がたっていました。やはり、患者さんの状態が良くなり、オーナーさんと一緒に喜々として診察室を出ていくときに仕事のやりがいを感じ、そして安堵(あんど)します。
 緊張感が漂う医療の現場で、もっとも神経を研ぎ澄ますのは抗がん剤治療を行うときです。抗がん剤投与による人為的ミスは決して許されないため、「絶対に元気な状態でお返ししなければ」というプレッシャーを伴います。
 大切ないのちをお預かりする仕事だからこそ背負う責任の大きさを感じる日々ですが、研究に対する未練や願望は全くなく、臨床一筋で来たことに悔いはありません。教科書通りにいかないことが多い一方で、たくさんの患者さんが治療に耐えて私の予想をはるかに超える生命力を発揮し、元気になる姿をこの目で見てきたからです。期待や希望を捨てず、続けていく価値が、今の仕事にはあると思います。

獣医師として働き、将来はにぎやかな家庭を

 夢のひとつだった開業を現院長の夫と共にかなえることができ、とてもうれしく思います。開院から3年目となる今、軌道に乗せることができました。子どもも生まれ、現在も獣医師として働きつつ、子育てをしています。
 仕事と家庭を両立させる上で、家には仕事を持ち込まないようにしています。帰宅後も症例が気になることもあるのですが、一歩病院を離れたら仕事のことはいったん頭の片隅におき、家庭のことに気持ちをフォーカスするよう心掛けています。また、院内で夫とは、チームの一員として働いていることを互いに意識し、診療を円滑に行うためのコミュニケーションをとっています。一般的にいっても仕事と家庭のメリハリをつけられれば、ママ獣医師は十分成立するのではないでしょうか。ある程度の割り切りも必要だと考えることができれば、充実した日々が過ごせると思います。
 私の家族は夫と息子のほか、犬と猫が一匹ずついます。徐々に動物の数を増やし、いつかは多頭飼いしてみたいと思っています。個性豊かな動物たちとにぎやかに、楽しく暮らすことが今後の夢のひとつです。

学びのツール

DSA03201.png3年次のときに買った聴診器を、今も愛用しています。聴き慣れたこの聴診器なしでは、安心して診察ができないほど。初心を忘れないためにも、今後も使い続けたいです。