麻布大学

卒業生メッセージ(ウェブ版)

研究から得た知識を生かし 現在は営業部門を統括を

CAB営業部 部長 獣医師
根本 洋史
エランコジャパン株式会社
1992年卒業/東京都立新宿高等学校出身

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心不全の重症度と弁の形態との相関性を研究

 麻布大学では、「外科学第一研究室(現在の「小動物外科学研究室」の前身)」に所属し、主に循環器と泌尿器を学びました。現在のカリキュラムと同様に、私も3年次から研究室に所属しました。私の2つ上にあたる5年次の先輩方は、学生ではありえないくらい高度な実験を行っていました。ついていくのに必死でしたが、貴重な体験をたくさんさせていただきました。
 その影響で専門性の高い学習・研究を先輩方と共に行い、私はその成果を僧帽弁閉鎖不全症のエコーによる重症分類に関する内容として卒業論文にまとめました。ちなみに、僧帽弁閉鎖不全症は犬でもっとも多い心臓病です。また、僧帽弁とは左室と左房の間の弁を指し、左室から大動脈へ血液を送り出す際、左房へ血液が逆流しないよう防ぐはたらきがあります。
 当時のエコーはコマ送りできず、僧帽弁閉鎖不全症とわかっても、重症度までは判定できませんでした。そのため、我々の研究班では約60コマさかのぼれる「Bモード」を搭載した最新鋭の機器を用い、NYHAの心機能分類(心不全の重症度をI~IV度に区分)と弁の形態と相関性の高い指標を探す研究をしました。この研究は、当時博士課程にいた院生と一緒に行ったもので、その方の卒業論文の、ちょうど前段にあたる部分でした。研究はかなり面白く年末年始も没頭し、私が卒論を書き終えたのは、なんと1月15日。それから国家試験対策を本格的に始めて何とか合格できたのが、大学時代の一番の思い出です。

研究室で得た知識を新薬のプレゼンで生かす

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 研究室に入った当初から、将来は開業医になりたいと思っていました。私が5年次くらいのとき、その思いを父に伝えたところ猛反対にあいまして。まさに父は"昭和の企業戦士"でしたから、会社に所属せずに、私が自力でキャリアを構築する姿が想像もつかなかったのでしょう。このまま対立し続けるわけにはいかないと、父も満足するような有名企業への就職を決意。人体薬を中心に動物薬も取り扱う内資系大手製薬会社から内定が出たとき、父は満面の笑みを浮かべて心から喜んでくれました。
 入社後は、動物薬の営業で多くの獣医師の先生方とお会いしました。私が研究活動を通じて身につけた心臓やエコーに関する知識は獣医療の現場でも通用し、先生方から信頼を得たことで入社1年目から営業成績を伸ばすことができました。
 そして、研究室で得たスキルと経験を最大限に生かせたのは、営業から本社勤務になり新薬の発売プロジェクトメンバーになったときでした。最初に手がけた新薬は、まさに私が卒業論文でかかわった僧帽弁閉鎖不全症の治療薬でした。当時は販売戦略だけでなく学術も兼ねていたため、各地域の製品説明会のプレゼンテーションの冒頭で心臓病の研究に携わっていた旨を語ると、会場内にいた獣医師の方々は真剣なまなざしへと変わり、売れ行きも好調に推移。また、泌尿器用薬の新薬発売促進プロジェクトにおいても、持てる知識をフルに活用しました。

さまざまな可能性に、目を向けてみよう!

 獣医師免許を取得後、間口を広げれば、さまざまな可能性にチャレンジできます。私のように製薬会社に入る道もあります。製薬会社の中にもマーケティング、学術、製品開発などいろいろな職種があるので、そのあたりに照準を合わせてみるのもよいでしょう。
 弊社でも、多様な業務で5名の麻布大学の卒業生が活躍しています。必ずしも深く学んだことと直結する製品に携われるというわけではありませんが、それもチャレンジです。間違いなくいえるのは、「大学時代に得た知識や経験は、この製薬業界でもしっかり役立つ」ということです。
 そして、製薬業界に限ったことではありませんが、麻布大学で深めた交友関係は、そのまま卒業後も生きていきます。学生時代に先生を含めできるだけ多くの先輩・同級生・後輩とつながりを持つことが、その後のキャリアや人生において、大きな財産となるはずです。

学びのツール

DSA08930.png研究室に入室後、最初に勧められた心電図の専門書。著者が来日した際の講演では、サインをもらうことができました。心臓病学を深めるきっかけともなった、思い出の一冊。