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プレスリリース:麻布大学、国立環境研究所と生物季節観測について共同研究を開始 〜キャンパスでサクラの開花などを観測、全国モニタリングに参加〜

麻布大学は、気候変動や生物多様性保全に関する教育・研究活動の強化を目指し、生物季節観測の継続・データ活用の仕組みづくりに向けた共同研究を国立環境研究所と開始しました。

本学は環境科学科の学生や教員が中心となって、キャンパスにあるサクラの開花やイチョウの黄葉などを指標とする生物季節の全国モニタリングの試行調査(実施主体:気象庁・環境省・国立環境研究所)に2021年から参加しています(写真1)。この試行調査では市民参加による全国的な観測ネットワークを構築し、データを活用する仕組みづくりを目指しており、麻布大学と国立環境研究所の共同研究では、大学キャンパスにおいて学生の参加を基盤とした観測体制を構築・維持する手法を検討します(図1)。教育機関がこの観測モニタリング事業と連携する形で教育に取り入れる試みは、全国でも初の取り組みです。

麻布大学:生物季節モニタリング調査員の腕章と調査の様子

麻布大学:「生物・季節観測」の発展的な活用に向けた試行調査

「生物季節」とは植物や動物が季節の変化に対して応答を示す生物現象で、毎年継続的に観測することで季節の遅れや進み、気候の違いなどを総合的に知ることができます。気象庁では60年以上にわたり数多くの動植物(57種目64項目)を対象として全国(最大102地点)で生物季節観測を行ってきました。その記録は、徐々に進行する温暖化などの気候変動が私たちの生活や生態系に及ぼす影響を知るための重要な基礎データです。しかし、気象庁は近年の生物生息環境の変化によって、観測の継続が困難になり、「生物季節観測」の対象種目を変更し、2021年1月から植物6種目9項目に縮小しました。この観測対象種目の変更に対応し、2021年6月に国立環境研究所気候変動適応センターが事務局となって長年の貴重な記録を継続・発展させることを目指して生物季節モニタリングの試行調査を立ち上げ、これに麻布大学も参加しました。

麻布大学構内にはイチョウ並木をはじめとして、四季折々の変化を感じることのできる動植物が数多く生息しています。生物季節の観測では,特定の地点や樹木を継続して定期的に観測することが重要です。麻布大学ではできるだけ周囲の人工物や局所的な環境の影響を受けにくい場所に生育している個体を「標準木」としてキャンパス内で選定し、学生と教員が協力して、2021年9月から第一段階としてイチョウ、カエデ、ウメ、サクラ、ヒガンバナの開花や紅黄葉などの観測しています。2021年は、麻布大学でのイチョウの黄葉が12月7日で(写真2)、気象庁による横浜市での観測結果(12月9日)とほぼ同じでした。カエデの紅葉は12月6日となり(写真3)、気象庁による東京都千代田区での観測結果(11月27日)と横浜市での観測結果(12月24日)の間になりました。麻布大学での観測結果は、これまでの気象庁による観測に神奈川県中西部平野部のデータを加えることになります。

イチョウ、カエデの標準木

2022年以降はこの取り組みを動物にも広げ、発足60年を迎える麻布大学野鳥研究部の協力により、構内でウグイス、モズなど鳥の初鳴の観測も行います。さらに、構内の草地を調査域に加え、セミやチョウ、カナヘビやカエルなど昆虫や爬虫類等の観測方法も模索する計画です。多様な生物グループを俯瞰することによって、気温や日照など気候変動の複数の要素が様々な生き物に与える影響について、それらの相互作用も考慮しながら把握することにつながります。また、これらの観測結果は、過去の長期にわたる観測データと合わせて、データサイエンス教育にも活用することができます。

個人ボランティアや市民団体の参加を得て、生物季節の観測ネットワークを構築する試みは、20世紀後半から欧米を中心に進められてきました。麻布大学が参加している生物季節の試行調査は、同様のネットワークを日本で構築し、気候変動対策や生物多様性保全の観点から、これまでの気象庁による観測を発展的に継続して、データを活用する仕組みづくりを目指しています。麻布大学ではこの試行調査への参加と共同研究によって、学生が観測に参加しながら、気候変動や生態系への影響についてキャンパスの身近な環境を例に学ぶ機会を拡充していきます。

<関連情報>

国立環境研究所気候変動適応センター 生物季節モニタリング調査員調査事業
 
気象庁「生物季節観測」の発展的な活用に向けた試行調査の開始について

環境省「生物季節観測」の発展的な活用に向けた試行調査の開始について

麻布大学野鳥研究部

ヨーロッパでの生物季節観測ネットワークEuropean phenology network

米国での生物季節観測ネットワーク US National Phenology Network

<環境科学科について>

環境科学科は、生活環境や都市環境のレベルから環境問題を捉え、高度化・多様化する社会からの需要に科学的なアプローチで対応できる人材を育成します。これまで、様々な環境問題について分析・評価、衛生、保全・教育などの観点から教育・研究を行ってきましたが、一昨年、今後おこり得る環境課題にも対応すべく新しい科学領域「未来共生科学」を提案し、社会連携型プロジェクト学習・フィールドワーク・気候変動の3つの教育・研究プログラムをスタートさせました。持続可能な開発目標SDGsを見据えた総合的かつ実践的な科学を推進します。
環境科学科
環境科学科 特設サイト

<お問い合わせ先>

・担当:麻布大学 広報課 担当:有嶋、檜垣
・電話:042-769-2032
・メール:koho(a)azabu-u.ac.jp ※(a)を@に変更してください。