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プレスリリース:麻布大学、岡山大学、宮崎大学の研究グループが牛伝染性リンパ腫ウイルス感染による消化管細菌叢の変化を発見

麻布大学獣医学部の鈴木 武人 准教授、村上 裕信 准教授、岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)の内山 淳平 准教授、宮崎大学農学部獣医学科の佐藤 礼一郎 教授の研究グループは、牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)感染が牛の消化管細菌叢を変化させることを見出しました。消化管細菌叢は、生体内の免疫機構への影響など健康に密接に関係していることから、この研究成果がBLVについて、直接的な影響(リンパ腫発症)だけでない、乳量や肉質の低下、繁殖成績の低下、健康状態の悪化など副次的な被害との関連性を解明する鍵となることが期待されます。
本研究成果は2023年9月16日、微生物学等に関する学術誌Annals of Microbiologyに掲載されました。

<研究のポイント(本研究で新たに分かったこと)>
・牛の胃と腸内の細菌叢、血液中の栄養成分について、BLV感染による影響を調べました。
・BLV感染によって消化管が形成する共起ネットワーク※が変化していることを明らかにしました。
・BLVはリンパ腫発症以外に健康に深く関係する腸内細菌叢を変化させていることがわかり、その被害の全容解明に役立てられることが期待されます。

牛伝染性 リンパ腫ウイルス感染研究・共起ネットワーク分析

<背景と目的>
BLVは、感染してもすぐにリンパ腫を発症することはなく、発症したとしても全体の数%と非常に低いため、これまで大きな問題として取り上げられていませんでした。しかしながら、BLVの国内の感染率は30〜40%と非常に高いことに加え、牛乳の生産量や繁殖成績の低下、健康状態の悪化などが指摘されていました。それにもかかわらず、これまでBLVがどのようなメカニズムで牛の生産性を低下させているかは不明であったため、近年注目されている細菌叢と血液中の栄養成分(揮発性脂肪酸;VFA)に着目し、BLV感染により細菌叢や栄養状態がどのように変化しているのかについて研究を行いました。

<結果と考察>
本研究は、国内の農場で飼われている42頭の乳用牛を対象に、血液中の栄養成分、第一胃(ルーメン)と腸内の細菌叢の解析を行いました。その結果、BLVに感染していない群とBLV感染群の間には血液中の栄養成分の差がありませんでした。また、ルーメンの細菌叢では主要な差は認められませんでした。しかしながら、腸内細菌叢においてはBLV感染牛で微少な変化が認められました。次に、細菌と細菌の関連性を観察するために、共起ネットワーク分析※を行いました。その結果、感染していない群とBLV感染群のルーメンおよび腸内の共起ネットワークが異なることが示されました。この変化は小さいものではありますが、BLV感染してもすぐに症状が出ないことと一致しており、長期間に渡る小さな変化が、長期的に牛の健康に影響を与えていることが考えられます。この結果は、BLV感染して生涯無症状の牛でもBLVが牛の健康に悪影響をもたらしている可能性を示すものとなりました。

※共起ネットワーク分析:ある集団中に存在する細菌種間の関連性を分析する手法で、その結果をネットワークグラフ(図参照)としてわかりやすく表示することが可能。

<掲載論文>
論文名:Exploratory study of volatile fatty acids and the rumen-and-gut microbiota of dairy cows in a single farm, with respect to subclinical infection with bovine leukemia virus
邦題名:牛伝染性リンパ腫ウイルスの不顕性感染に関する乳牛の揮発性脂肪酸とルーメンおよび腸内細菌叢の探索的研究
掲載誌:Annals of Microbiology
著者:Takehito Suzuki, Hironobu Murakami, Jumpei Uchiyama, Reiichiro Sato, Iyo Takemura-Uchiyama, Masaya Ogata, Kazuyuki Sogawa, Hiroho Ishida, Apichart Atipairin, Osamu Matsushita & Makoto Nagai
DOI:10.1186/s13213-023-01737-4
URL:https://annalsmicrobiology.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13213-023-01737-4


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