プレスリリース:室内化学物質を低減する空気清浄機開発の研究が国際的評価を獲得
麻布大学、FUJIOH※1が清水建設と共同執筆
研究論文が学術雑誌の影響力指標SJR※2で最高位の評価を獲得するアメリカ毒性学会の学術誌に掲載
室内化学物質を低減する空気清浄機開発の研究が国際的評価を獲得
麻布大学、富士工業株式会社(神奈川県相模原市/厨房機器製造・販売/代表取締役社長 柏村浩介 以下、FUJIOH※1)は、清水建設株式会社(東京都中央区/代表取締役社長 新村達也 以下、清水建設)と共同で執筆した論文が、学術雑誌の影響力指標SJR※2(SCImago Journal Rank)で最高位の評価区分Q1を獲得するアメリカ毒性学会の学術誌『Toxicological Sciences』に掲載されたことをお知らせします。本論文は、室内のVOC※3低減を目的とした空気清浄機開発に関する共同研究をまとめたものです。毒性学分野の専門家による厳格な査読を経て学術誌に掲載されたことは、本研究が世界水準の質の高さであると客観的に評価されたことを示しています。
『Toxicological Sciences』掲載
Webサイト:https://academic.oup.com/toxsci/article/209/3/kfag009/8475412
※1 FUJIOHは、富士工業グループの企業ブランドです。
※2 学術文献データベース Scopus のデータを基に、引用元の質(どの雑誌から引用されたか)と引用数を考慮して学術誌の影響力を評価する指標。『Toxicological Sciences』評価掲載Webサイト:https://www.scimagojr.com/journalsearch.php?q=25218&tip=sid&clean=0
※3 VOC(揮発性有機化合物)は、建材や家具、日用品などから揮発し、室内の空気を汚染する物質の総称です。

左:VOC低減型空気清浄機稼働・未稼働時の室内の総VOC
(動物病院A、動物病院BはVOC低減型空気清浄機を稼働。動物病院Cは未稼働。)
右:開発したVOC低減型空気清浄機の内部構造
■研究成果の要点
本研究は、化学物質を取り除くケミカルフィルターを搭載したVOC低減型空気清浄機を開発し、快適な空気環境の実現を目指したものです。実証では、VOC低減型空気清浄機が室内のVOCを大幅に低減することを確認しました。さらに、今回の実証によりVOC低減型空気清浄機がアレルギーなどの疾患抑制に寄与する可能性も示唆されました。
■研究の背景
空気中に含まれるVOCは、室内を汚す要因の一つとして近年注目されています。しかし、医療施設では薬剤や建材由来の化学物質による室内空気汚染が起こり得るものの、この問題に関する研究は十分におこなわれていません。また、換気設備が十分でない物件で開業した医療施設では市販の家庭用空気清浄機が使われることがありますが、化学物質の低減効果が求められる水準に達しない場合があります。
こうした背景から、獣医療の専門家である麻布大学、室内環境の評価技術を有する清水建設、空気環境改善を手掛けるFUJIOH の3者が協力し、空気中の化学物質対策が必要な施設向けの空気清浄機を開発しました。
■実証内容
・複数の動物病院で、院内での使用を想定して大風量に改良したVOC低減型空気清浄機の開発機(寸法:幅360mm×奥行355mm×高さ1,100mm、据え置き型)を設置。稼働前・稼働後に、室内の総VOC(T-VOC)を含む主要成分(可塑剤や接着剤由来化合物等)を高精度分析装置(GC/MS)で測定。
・濃度推移を解析し、フィルター材の組み合わせと交換サイクルを最適化。
・通常の空気環境とVOC低減型空気清浄機を使用した際の空気環境で飼育したマウスを比較した喘息とアトピー性皮膚炎の発症に関する基礎研究データと現場測定結果を統合して評価。
・論文化にあたり評価精度を高めて研究の信頼性を向上させるため、免疫細胞が分泌するサイトカインの一種であるインターロイキン※4を、アレルギー反応を評価する指標の一つとして使用。
※4 免疫細胞同士が情報をやり取りするために分泌され、体の免疫反応を調整するうえで重要な役割を担う物質。
■主な発見
VOC 低減型空気清浄機を設置した動物病院の総VOC 濃度は、換気性に優れた大学附属動物病院と同程度の100µg/m³未満に維持されていたのに対し、未設置の動物病院の総VOC濃度は100µg/m³を超えていました。これによって、VOC 低減型空気清浄機の稼働により、室内の総VOC 濃度が大幅に低減されることが確認されました。
さらに、VOC低減型空気清浄機を使用した空気環境で飼育したマウスは、通常の空気環境で飼育したマウスと比較して、喘息およびアトピー性皮膚炎の症状が有意に軽減されることも基礎研究で確認されています※5。そのため、今回の実証により、VOC低減型空気清浄機による空気中の化学物質制御が気道や皮膚の疾患の抑制に貢献する可能性が示唆されました。
※5 出典:Ohira C, Tomita K, et al. Removal of volatile organic compounds by chemical filters significantly inhibited the development of atopic dermatitis symptoms in mice: potential implications for air-conditioning systems in healthcare environments. Toxicological Sciences. 2026;209(3):kfag009.
■研究の評価
2026年3月にアメリカで開催されたアメリカ毒性学会の学術大会で、本研究のポスター発表をおこないました。この学術大会は、人の健康や環境に対する化学物質などの有害作用に関する研究成果を発表する国際的な集まりです。今回の発表により論文が研究者や専門家に広く共有され、研究の認知が高まりました。

アメリカ毒性学会の学術大会におけるポスター発表の様子
■今後の展望
本研究で開発したVOC低減型空気清浄機は、医療施設をはじめ、美術品保護のためにVOC対策が必要な美術館・博物館、アウトガス※6対策が求められる工場など、幅広い分野での活用が期待されます。また、設置環境で発生するVOCの特性に応じてケミカルフィルターの組成を調整することで、VOC低減性能のさらなる向上も見込まれます。
麻布大学、FUJIOHは、今後も快適な室内空気環境の実現に取り組んでまいります。
※6プラスチックや接着剤などの有機材料や梱包材から放出されるガス成分
室内化学物質を低減する空気清浄機開発の研究が国際的評価を獲得
●麻布大学について
麻布大学は、2025年に学園創立135周年を迎えました。動物学分野の研究に重点を置く私立大学として、トップクラスの実績を基盤に新たな人材育成に積極的に取り組んでおり、獣医学部(獣医学科、獣医保健看護学科、動物応用科学科)と生命・環境科学部(臨床検査技術学科、食品生命科学科、環境科学科)の2学部6学科と大学院(獣医学研究科、環境保健学研究科)の教育体制の下、ヒトと動物のよりよき関係をつなぐ専門性の高い人材育成を進めていきます。
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