麻布大学

生命・環境科学部

臨床検査技術学科MEDICAL TECHNOLOGY

アレルギーの原因となる
タンパク質を発見!

アレルギーの原因となる
タンパク質を発見!

小澤 彩夏

神奈川県立相原高等学校出身

アレルギーで苦しむ人のために役立ちたいと考え、研究を志望

私には酪農家になる夢があり、畜産科学科を擁する高校を選び、広く農業全般について学んでいました。その科目のひとつに産業動物の飼育管理などを学ぶ実習があり楽しく参加していたところ、そこで初めて、牛によるアレルギー症状が出現したのです。しばらく様子を見ながら授業を受けていたものの、ついにはドクターストップがかかってしまいました。


「臨床検査技師」の存在を知ったのは、高校の先生の勧めでさまざまな職業を紹介する動画教材を見たことがきっかけです。数ある中で一番ひかれたのが、臨床検査技師でした。高校の授業においては顕微鏡などを用いた実験活動が特に好きだったため、血液や尿といった検体に関する検査も行う臨床検査技師の仕事に興味を持ちました。そして「臨床検査技師国家試験」の受験資格が得られるところを調べていた際に目にとまったのが、麻布大学の臨床検査技術学科でした。私の住む地域から程近いことに加え、アレルギーに関する研究も行っていると知り、「ぜひここで学びたい!」という思いで入学しました。


本学科では2年次から研究室に所属し、卒業論文作成へ向けて研究を行うことができます。私のほかにもアレルギーで苦しむ人のために力になりたいと考えていたため、2年次になるとアレルギーなどの研究を行う「生化学研究室」に入室しました。

地道な実験活動が実を結び、ついにアレルゲンを発見

牛アレルギーの研究を望んでいましたが、検体の入手が高いハードルとなりました。牛と接する機会は一般にまれで、患者さんの絶対数が少なかったためです。諦めず検体を待ちながらも、先生の斡旋(あっせん)で小児に増えている「いくらアレルギー」を研究することにしました。テーマは「いくらアレルギーにおける新規アレルゲンの探索・同定」――簡単にいうと、いくらに含まれるアレルゲン(特定のタンパク質)を見つけることです。ちなみに、食物アレルギーは体がアレルゲンを異物と認識したときに抗体ができ、結果としてアレルギー症状が出るというしくみです。


毎日のように研究室に通い、先生の助言をいただきつつ実験を進めました。率直にいって、うまく進まないことのほうが多かったです。しかし、私にとっての探究とは、困っている誰か、悩んでいる誰か、それぞれの心が少しでも軽くなることを祈りつつ、研究を粛々と行うことでした。いつしか探究自体が私自身のエネルギーとなりポジティブな日常の行いと化したころ、いくらのアレルゲンを発見することがかなったのです!


アレルゲンを発見できても、そこから先にはさらに長い道のりがあります。治療法を解明し、患者さんの症状を改善するまでにも、それなりの年月を要するからです。ただ私にとっては原因の一端を見つけ、「ゼロ」だったものが「イチ」に変わっただけでも、大きな意味があったと思います。

昔からの夢だった検体検査に携わることに

卒業論文を書き終えた今、先生のご配慮で牛アレルギーを検証する機会を持たせていただいています。医療機関から検体を提供してもらい、念願だった研究に少しでもかかわることができ、大変ありがたく感じています。卒業を迎えるまであとわずかの時間しか残っていませんが、就職するタイムリミットのところまで、私の探究は続きます。


卒業後は、検査センターに勤務します。病院内の検査室に配属することが決まり、そちらで検体検査に携わることになります。臨床検査技師の役割の中でも、私は検体を扱う部門で顕微鏡をのぞく仕事に憧れていたことから、希望を実現できました。こうした進路を決定づけたのは、3年次後期に行った臨床実習(臨地実習)です。特に、血液検査の現場で血液塗抹標本の作製方法を教えていただいたことは、今後の仕事に大いに役立つと思います。先輩方のご指導のおかげで観察に適したきれいな標本を作製できるようになり、得られた成果はとても大きかったです。そして、高校時代と同じように「検体と向き合う仕事に就きたい!」と改めて感じ、将来歩みたい方向性を再確認することができました。


これから私は数多くの検体に接していきますが、その向こう側にある患者さんの気持ちをいつも思いながら、仕事に携わっていくつもりです。私たち臨床検査技師がより迅速でより精確な検査を行うことで、より多くの方々が救われることを心から願っています。

私の成長ステップ

STEP 01

個別指導で苦手を克服

自分自身が大きく成長できたという点で、「基礎化学・分析化学」の授業がもっとも印象に残っています。高校での学びは畜産科学が中心で化学の基礎的な勉強をしてこなかったため、最初のころは先生の話がまるで暗号のように聞こえてしまいました。しかし、チューターによる個別指導のおかげで、授業内容がわかるようになりました。

STEP 02

研究室に所属

2年次になり、待望の生化学研究室に入室しました。研究室に入るのは通常3年次からですが、臨床検査技術学科の学生は4年次に国家試験の受験があることが考慮され、所属は2年次からとなります。私が入った生化学研究室ではひとりがひとつのテーマに取り組む態勢をとっていたため、研究を単独でも行えるよう、実験に欠かせない道具の扱い方から練習を始めました。

STEP 03

いくらのアレルゲンをついに発見!

アレルゲンを検出するため、「電気泳動」を使いました。電気泳動とは、アレルゲンが電場のもとで移動する現象を指します。スムーズにいくときれいなバンドが出るのですが、最初はうまくいきませんでした。先生と話し合いながら何度も調整を重ねたところ、ついにアレルゲンを見つけることに成功しました。この結果は、学会でも発表させていただきました。

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