麻布大学

獣医学部

動物応用科学科ANIMAL SCIENCE AND BIOTECHNOLOGY

エコツーリズムから広がる
野生動物との共生の可能性

エコツーリズムから広がる
野生動物との共生の可能性

山崎 稜平

鹿児島県・KTCおおぞら高等学院出身

以前から知っていた先生の論文をきっかけに、入学を決意

幼少期から動物が大好きで、物心ついたころには動物図鑑を夢中になって読んでいました。テレビの動物番組もよく視聴していました。番組にはさまざまな大学の先生方が解説者として登場していましたが、その中にいらっしゃったのが「野生動物学研究室」の担当教員である塚田英晴先生です。そのような経緯から、麻布大学と塚田先生のことは志望大学を決める前からテレビを通して認識していました。


中学生まで、動物に対しては単に「かわいいな」「面白いな」としか感じていませんでしたが、高校生になってからは野生動物の保全を図ることが喫緊の課題であることに気づきました。特に、野生動物と人との緩衝地帯として機能してきた里山が、過疎化などによる手入れ不足で荒廃し、生態系のバランスが崩れている現状をなんとかしなければと思い始めました。絶滅の危機にひんする野生動物を守らなければならない一方で、シカやイノシシなど増えすぎている種とはどう向き合うべきかを意識するようになりました。


そのような時期、高校の先生から「大学選びは先生選び」とアドバイスされたことも重なり、以前から知っていた塚田先生の論文を手に取ったのです。〈シカの食害に対し、電気柵はどの程度有効か?〉という内容は興味深く、読み進めるうちに「自分がやりたい研究は、まさにこれだ!」と直観しました。この論文との出会いにより、麻布大学の動物応用科学科に照準が定まりました。

エコツアーを通じ、環境保全に対する人々の意識向上を図る

里山を取り巻く人間と野生動物とのより良い関係性構築に向け、塚田先生のもとで取り組みたいという思いは入学後も変わらず、待望の野生動物学研究室に入ってからも自身のモチベーションは揺らぎませんでした。


研究室では、野生動物との共存を図るため数多くの研究活動が行われており、調査地も全国各地はもちろん、中国にまで及んでいます。数ある拠点のひとつに群馬県の「神津牧場」があり、そこでは歴代の先輩方によって野生動物をエコツーリズムに用いる研究が行われてきました。神津牧場では既に野生のシカやイノシシを用いたエコツアーを実施済みですが、ニホンアナグマでも同じように展開できるかどうか、基礎生態やエコツーリズムに用いる方法を含め、さまざまな角度から検討を重ねてきました。ニホンアナグマは一般に広く知られていない動物ですが、その魅力を少しでも多くの観光客に伝えることで、環境保全に対する人々の意識向上に貢献できるのではないか?――そのような考えから、私も一員として加わることにしました。


そして2021年11月、念願のニホンアナグマ版エコツアーを開催したところ、回収した参加者アンケートからニホンアナグマの認知度がツアーを通して向上したと確認されました。こうした手ごたえを受け、今後も同様のツアーを企画しています。ニホンアナグマの魅力をさらに広めるべく、内容もより充実したものにできればと準備を進めています。

インターンシップは将来の仕事を考える絶好のチャンス

大学卒業後の進路については、2つの側面から大学院への進学を考えています。ひとつはニホンアナグマの研究を深めたいという純粋な探究心です。もうひとつは人と野生動物にかかわる課題を科学的知見で解決する力をさらに高め、その上で社会に出るというプランがあるためです。


将来は、人と野生動物の架け橋となる仕事を望んでいます。インターンシップを活用して山梨県にある「ヘルシー美里」に参加させていただき、そこでネイチャーガイドの仕事ぶりを間近に見ることができたからです。また、エコツーリズムは地域を元気にする役割が期待されていますが、その実際を知ることができた貴重な機会でもありました。卒業後の進路を考える上で、本学のインターンシップ(学外実習)はとても役に立ちました。


インターンシップは、将来の職業選択を大きく左右すると思います。私を含め、本学では多くの学生がインターンシップに参加しています。私が1年次のころに描いていた将来像は環境調査を行う会社への就職でしたが、インターンシップでの体験から、分かりやすくガイドを行うことの楽しさを発見し、ガイドの仕事への興味が高まりました。麻布大学に入学された方もぜひインターンシップを通して未知なる世界を積極的に知り、経験値を上げ、そして未来の自分への糧としていただきたいと思います。

私の成長ステップ

STEP 01

体育の授業で馬に乗る!

「基礎体育」の授業では希望者の多い乗馬クラスを受講でき、大変ラッキーでした。馬の手入れなどを通して直接触れ合えるほか、常歩(なみあし)速歩(はやあし)といった騎乗の基本的な技術も身につけられることが、人気を集める理由です。また、この授業を通してクラスメートとの交流を深めることができ、かけがえのない親友を得られたことも何よりの財産となりました。

STEP 02

ニホンアナグマを調査

3年次から野生動物学研究室に所属し、卒業論文の作成へ向けた研究がスタート。2か月に1度の頻度で神津牧場に数泊し、ニホンアナグマの生態を調査しました。ニホンアナグマはその名の通り穴を掘る習性があるため、巣穴の近くに行けばなんらかの痕跡が必ず見つかります。遭遇できるチャンスもあることから、エコツアー成功のカギを握るのは巣穴だという確信が高まりました。

STEP 03

初めてのエコツアーを実現し、効果を実感

歴代の先輩方が研究を続けてきた「ニホンアナグマのエコツーリズム利用」ですが、私の代で初めて実際にエコツアーを実現し、ツアー参加者への効果を確認することができました。私はツアーの企画立案から行い、実際のツアーでは参加者にできるだけ楽しく学んでいただけるよう心掛けました。

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