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動物たちの心を知って、ヒトと野生動物の地域共生を目指す -生命・環境科学部と奄美大島の大和村が包括的連携協定を締結-

麻布大学生命・環境科学部と奄美大島の大和村との包括的連携協定締結式

麻布大学 生命・環境科学部は、鹿児島県奄美大島大和村で抱えている、アマミノクロウサギなどの野生動物による農作物被害やロードキルなどの課題を解決すべく、2025年12月17日(水)に同村と包括的連携協定を締結しました。

本協定を通じて、アマミノクロウサギミュージアム「Quru Guru」を拠点に、"動物行動学"の観点から野生動物の特性を解明し、「ヒトと動物との共存」及び「自然環境との調和」を探求するとともに、住民による自発的な地域社会の持続的発展を目指します。

本協定で現場活動の中心を担う江口 祐輔 教授(フィールドワーク研究室所属)によると、野生動物被害の対策で失敗する原因の多くは、「捕獲して減らす」に頼りすぎていることが挙げられると言います。

動物をただ追い払うのではなく、時間を掛けながら彼らの能力や行動及び心理状態を知っていき、ヒトも動物も傷付かない解決策を見つける

既に江口教授は、島根県美里町に設置されている本学サテライト施設「フィールドワークセンター」を拠点に、イノシシなどの被害に対して動物行動学の観点から対策を講じ、様々な成功実績を積んでいます。

例えば、イノシシは「下をくぐりたがる」という特性があるため、柵の下部を補強するだけで被害をゼロにすることを実証してきました。捕獲しなくても、ちょっとした工夫を加えるだけで十分なのです。

これまでの豊富な実績を糧に、今度は奄美大島で対策に取り組みます。

奄美大島の象徴といえば、特別天然記念物に指定されているアマミノクロウサギ。絶滅危惧種でもありますが、保護活動の成果により、近年は生息数が増加傾向を見せています。しかし、生息するエリアが広範囲になったことで、現在大和村では、クロウサギのロードキル(交通事故死)や農作物被害が問題となっています。特別天然記念物ということで捕まえて移動させることもできず、ロードキルでは道路に出てこないように防獣ネットを設置する、農作物被害では畑に囲いやフェンスを設置するなどの対策を施しているものの、効果的な具体策はまだ見つかっていません。

「なぜこんな行動を取っているのか。何を考えているのか。単に行動の結果だけを追うのではなく、まずは動物たちの心を知って、その上で正しい対策を施せれば、駆除しなくても彼らに自ら行動を変えさせて被害を回避することができます。これが本協定の目的です。」

「知識があれば、ヒト目線だけでなく、動物目線で多角的に冷静に対処できます。大人だけでなく、小中学校の授業を通じて、子どもから大人までが動物を正しく理解することが重要です。」

ヒトも野生動物も同じ大和村に住む仲間。本協定では、地域住民が動物との正しい距離感を学び、自らの手で豊かな環境を維持し続けられる社会に改善していくことを目指します。

そのために、まずは大和村でモデルケースを作り、徐々に奄美大島中に広げていきます。

また、本学の学部生や院生も現地に赴き、江口教授指導の下、野生動物の行動特性や感覚能力などについて、課題解決型の研究として取り組むことができます。
現地で学ぶことは即戦力となる人材の育成につながり、村に新しい活気をもたらすことが期待されます。また、住民の方々との交流を通じて、学生にとっても自身の視野を広げる成長の機会となります。

このように、本協定は大学の知見を社会に還元する重要な機会となります。村の環境の変化に合わせて、麻布大学は大和村をサポートし続けます。

QuruGuru

【アマミノクロウサギの保護研究施設@アマミノクロウサギミュージアムQuru Guru】
一般の方も来館でき、夜行性のクロウサギを昼でも観察できるように工夫されている。
また、クロウサギの目線でウサギの生活も体感できる。
なお、本施設には本学獣医学科卒業生も職員(獣医師)として勤務している。

アマミノクロウサギ
Quru Guruで保護しているクロウサギを対象に研究活動を展開していく予定

<参考情報>

教授 江口 祐輔