味の成分は理解。
次の探究は味の向上について
味の成分は理解。
次の探究は味の向上について
中田 裕里
広島県・ノートルダム清心高等学校出身

高校時代から抱いていた味に関する疑問は、授業で解決
最初は動物に関心があって麻布大学のオープンキャンパスに参加したのですが、食品生命科学科の展示を見たとき、「面白そうな研究がある!」と感じました。味に関する話やパンに使われる酵母菌の話などさまざまな説明を聞くうちに、本学科の研究に興味を持つようになったのです。加えて、HACCPによる衛生管理を学べることにも魅力を感じました。
大学に入る前は、私たちが普段口にする食品の味や栄養分などを科学的に探究してみたいと考えていました。具体的には、家庭科で習った「基本五味(甘味・塩味・酸味・苦味・うま味)」に関することです。どんな成分から構成されているのか? 味はどのように生まれるのか? など、食にまつわる基礎知識のさらに向こう側にある世界を知りたいと考えていました。
高校時代から抱いていた味に関する疑問は、1年次の「有機化学」の授業ですんなり解決しました。食べ物のおいしさのカギはアミノ酸にあることをしっかりと認識し、それ以降の「食品分析学」「食品分析学実習」といった各授業を通して食べ物の味とアミノ酸の関係についてより理解が深まりました。いずれの授業も、現在私が所属する「食品分析化学研究室」の担当教員である良永裕子先生がコーディネーターを務めておられました。それぞれの授業を通じ、数あるアミノ酸の中には甘味や酸味以外にも、苦味やうま味を呈する種類があることを知りました。
SDGsへの貢献が期待される素材を用い、研究がスタート
元々味に関する研究に興味があったことに加え、授業でお世話になった良永先生が主催している食品分析化学研究室に入りました。この研究室での主なテーマは、食品の生産・加工・保存などの条件が味にどのような影響を及ぼすかを調べることです。
現在は、シリカ添加の味への影響について調べています。シリカとはミネラルの一種で、二酸化ケイ素もしくは二酸化ケイ素によって構成される物質の総称です。シリカを用いると野菜の収量増加や根の張りをよくするなどの効果がみられ、特にイネなどの成長を促すことがわかっています。動物においては、老化や酸化の防止が期待されています。私が所属する研究室では既にシリカに関する研究が行われてきましたが、植物に関しては未着手だったことから、水耕栽培におけるシリカ添加の味への影響を調べることにしました。
この実験では、企業から提供していただいた「もみ殻由来シリカ」を使っています。ちなみに、もみ殻は産業廃棄物となっていましたが、新たに開発された燃焼技術により、健康被害が確認されていない「非晶質シリカ」が生み出せるようになったそうです。非晶質シリカには工業用製品をはじめさまざまな用途があり、イネから派生した非晶質シリカを再びイネの肥料として使うこともできます。非晶質シリカはまさにSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の一翼を担い、循環型社会を実現する一助となります。
研究活動と就職活動の両立をはかり、進路実現をめざす
実験は豆苗で進めました。豆苗は短期間で栽培できるほか、非晶質シリカ添加による違いを観察できる可能性があったためです。成長度合いで有意差*が出たときには大変感動しました。結果として、非晶質シリカは豆苗の成長に貢献することが明らかになりました。
一連の研究から得られた気づきは、研究には参考文献が欠かせず、先行して似たような研究が行われていないか等を、事前に下調べしておくことの重要性です。そして、毎月開催される研究
食に関する研究活動を通して学んだことを生かすべく、卒業後は食品業界を志望しており、商品を開発する仕事をめざしています。これから就職活動が本格化する中、本学のキャリア支援課から「就職活動対策講座」などの案内が随時メールで届くため、大変助かっています。研究活動と就職活動をうまく両立させながら、希望する進路に進みたいと考えています。
*偶然とは考えにくく、明らかに意味のある差