
可搬型蛍光X線分析装置を用いたマイクロプラスチック中微量元素の定量分析
主な研究者:
生命・環境科学部 准教授 中野 和彦
この研究では、海岸に漂着した小さなプラスチックごみ(マイクロプラスチック)に含まれる微量の金属元素(クロム、鉄、コバルト、銅、亜鉛、臭素、鉛)を、持ち運び可能な装置を使って、正確に測定する方法を開発しました。
この装置は、X線を使って物質の成分(元素)を調べることができるものです。ただし、試料の厚さや形状の違いによって測定結果が変わるため、研究者たちはその影響を補正する計算方法を考案しました。この方法により、直径2ミリメートルまでのマイクロプラスチックであれば、精度の高い測定が可能になりました。
実際に日本の海岸で採取した94個のマイクロプラスチックを分析したところ、49個から金属が検出されました。特に、欧州のRoHS指令で有害物質に指定されている鉛やクロム(六価クロム)、臭素が、それぞれ9個、20個、2個の試料から見つかりました。これらの金属の内、鉛やクロムは、2000年代以前の塗料や着色剤として使用されていた可能性があります。
この研究は、簡単に持ち運べる装置でマイクロプラスチック中の有害金属を迅速に検出できる方法を示しており、海洋汚染の実態把握や環境保護に役立つと期待されます。
論文タイトル:
Quantitative Analysis of Trace Elements in Microplastics Using Transportable XRF Spectrometer
論文掲載URL:
https://analyticalsciencejournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/xrs.3487
DOI:
https://doi.org/10.1002/xrs.3487