
2025.06.03NEW獣医学部
主な研究者:
獣医学部 教授 上家 潤一
獣医学部 講師 峰重 隆幸
この研究では、12歳のオスのチワワの下あごにできた珍しい口腔腫瘍について報告しています。この腫瘍は「犬の棘状細胞性アメロブラストーマ(CAA)」と呼ばれるもので、通常は歯の周りにできる良性の腫瘍です。しかし、このケースでは、腫瘍の一部に「粘液腺様の変化」が見られました。これは、腫瘍細胞が粘液を分泌する腺のような構造を持つという、これまで報告されていない特徴です。
最初の検査では、腫瘍の組織を一部取り出してCAAと診断されましたが、詳しい画像検査で骨が溶けていることがわかり、手術で腫瘍を取り除きました。その後の詳細な組織検査では、通常のCAAの細胞に加えて、粘液を含む腺のような構造を持つ細胞も確認されました。これらの細胞は特定の染色方法で粘液を示し、腫瘍全体の増殖の程度は低く、悪性度は低いと判断されました。
このような粘液腺様の変化を伴うCAAは、獣医学の文献では前例がなく、他の口腔腫瘍と区別するためには、詳細な組織学的および免疫染色による分析が重要であることを示しています。この症例は、犬の口腔腫瘍の診断と理解を深める上で貴重な情報を提供しています。
論文タイトル:
Acanthomatous ameloblastoma with mucinous glandular differentiation in a dog
論文掲載URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvms/87/2/87_24-0374/_article/-char/ja/
DOI:
https://doi.org/10.1292/jvms.24-0374