
猫の前臨床期肥大型心筋症における血清カルニチンプロファイルに関するパイロット研究
主な研究者:
獣医学部 教授 藤井 洋子
この研究では、猫の肥大型心筋症(HCM)の初期段階における心臓のエネルギー代謝の変化を調べるため、血液中のカルニチンの種類とその比率を分析しました。HCMは、左心室の壁厚が厚くなる病気で、初期段階では症状が現れにくいため、早期発見が難しいとされています。
研究には、HCMの初期段階にある14匹の猫と、健康な22匹の猫が参加しました。血液検査では、カルニチンの総量、遊離カルニチン、アシルカルニチン、そしてアシルカルニチンと遊離カルニチンの比率(AF比)を測定しました。その結果、総カルニチン、遊離カルニチン、アシルカルニチンの濃度には有意な差は見られませんでしたが、AF比はHCMの猫で有意に低下していることが分かりました。
AF比の低下は、心臓のエネルギー代謝が変化している可能性を示唆しています。具体的には、心臓が脂肪酸をエネルギー源として利用する能力が低下し、代わりに糖を利用するようになっている可能性があります。これは、心臓のエネルギー供給が不足している状態を示しており、HCMの進行に関連していると考えられます。
この研究の意義は、HCMの初期段階での心臓のエネルギー代謝の変化を明らかにし、AF比がその指標として有用である可能性を示したことです。これにより、HCMの治療法の開発に役立つ情報が得られると期待されます。
論文タイトル:
A pilot study investigating serum carnitine profile of cats with preclinical hypertrophic cardiomyopathy
論文掲載URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvms/87/1/87_24-0171/_article/-char/ja/
DOI:
https://doi.org/10.1292/jvms.24-0171