麻布大学

研究・産学官連携COOPERATION

【論文】乳房炎の炎症を悪化させるLPSは抑えられる?~菌数と抗菌薬濃度が左右する"大腸菌・クレブシエラ"のLPS放出

主な研究者:
獣医学部 教授 河合 一洋

牛の臨床型乳房炎から分離した大腸菌(Escherichia coli)とクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)について、抗菌薬と一緒に培養したときに菌から放出されるリポ多糖(LPS:内毒素)の量を測定しました。

まず、初期菌量が10の5乗CFU/mLの条件では、4時間培養後のLPS放出量は、マルボフロキサシン(MBFX)およびセファゾリン(CEZ)を用いた場合、一定以上の高濃度で陰性対照(抗菌薬なし)より有意に少ない結果となりました。具体的には、大腸菌ではMICの5倍超、K. pneumoniaeではMICの50倍超の濃度でLPS放出が有意に低下しました。これは、高用量の抗菌薬に曝露されると、菌の増殖や溶菌(菌が壊れること)に伴うLPS放出が抑えられる可能性を示しています。

一方、初期菌量が 10の8乗CFU/mLと高い条件では、MBFXおよびCEZをMICの50倍および250倍という高濃度で4時間培養しても、大腸菌・K. pneumoniaeともに、LPS放出量は陰性対照群と同程度でした。つまり、菌数が多い段階では、高濃度の抗菌薬を使ってもLPS放出低減の効果が出にくいことが明らかとなりました。 また、MBFXとCEZはいずれも菌をフィラメント化(細長く伸びる形態変化)させたが、その変化はセフタジジム(CAZ)で見られるものより軽度で、かつLPS放出量も低い傾向と関連していました。

以上より、大腸菌やK. pneumoniaeが原因の乳房炎では、菌数が少ない早期の段階で高濃度の抗菌薬を投与できれば、LPS放出に伴う悪影響(炎症悪化など)を抑えられる可能性があるという結論が示されました。

この研究は、乳房炎の治療において早い段階で適切な量の抗菌薬を使うことが重要なことを示しています。牛の健康を守り、治療効果を高めるための新しい知見になります。

論文タイトル:
Effect of marbofloxacin and cefazolin concentrations and bacterial count on lipopolysaccharide (LPS) release by Escherichia coli and Klebsiella pneumoniae isolated from bovine clinical mastitis

論文掲載URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvms/88/6/88_25-0502/_article

DOI:
https://doi.org/10.1292/jvms.25-0502