
2025.05.30NEW生命・環境科学部
主な研究者:
獣医学部 教授河合 一洋
獣医学部 助教楜澤 共生
獣医学部 助教風間 啓
この研究では、牛の乳房炎(乳腺の炎症)に対する甘草の成分「グリチルリチン」の抗炎症効果を調べました。乳房炎は通常、抗菌剤で治療されますが、抗菌剤の使用を減らしたり患畜の苦痛を軽減するために、抗炎症薬も使われています。グリチルリチンは抗炎症作用を持つとされており、牛乳房炎に対する臨床効果も報告されていますが、そのメカニズムは完全には解明されていません。
我々は、まず牛の乳腺上皮細胞に細菌の成分を加えて炎症を起こし、グリチルリチンを加えると炎症時に分泌される物質(炎症性サイトカインのひとつ、IL-1β)の遺伝子発現量が減ることを確認しました。次に、実際の乳牛にグリチルリチンを乳房内投与し、炎症の程度を調べました。その結果、炎症の指標である体細胞数や炎症性サイトカインの遺伝子発現量が減少し、グリチルリチンが炎症を抑える効果があることが示されました。
本研究では、グリチルリチンの乳房炎に対する抗炎症効果のメカニズムが部分的に解明されました。作用機序や臨床応用のさらなる研究により、抗菌剤使用量の低減や患畜の苦痛を軽減する治療方法の開発が期待されています。
論文タイトル:
Anti-inflammatory effects of glycyrrhizin on lipoteichoic acid and lipopolysaccharide-induced bovine mastitis
論文掲載URL:
https://journals.pan.pl/dlibra/show-content?id=134449
DOI:
10.24425/pjvs.2025.154011