この研究では、7歳の雑種猫が2年間にわたって断続的な乾いた咳を呈していた症例を報告しています。​肺生検による組織学的検査の結果、気管支や細気管支の上皮の過形成、気道上皮内への球状白血球の浸潤、リンパ小体の気道や呼吸細気管支、肺胞導管周囲への浸潤が認められました。​
ワルチン・スターリー染色により、呼吸上皮の繊毛とともに分布する銀親和性の細長い細菌が多数確認されました。​これらの形態、分布、グラム陰性、超微細構造の特徴は、繊毛関連呼吸細菌（CAR細菌）として知られるものと一致していました。​
さらに、リアルタイムPCR法を用いて、フィラバクテリウム・フェリス（Filobacterium felis）という新種の細菌が肺組織から検出されました。​この細菌は、猫の慢性気管支炎や細気管支炎の原因となる可能性が示唆されており、特に球状白血球が炎症反応の顕著な特徴として認められる点がユニークです。​
この症例は、猫の慢性呼吸器疾患における新たな病原体の関与を示唆しており、今後の研究において、CAR細菌が猫の呼吸器疾患においてどのような役割を果たすのかを明らかにすることが重要です。