
無機ヒ素の急性および亜急性経口曝露による、Th2およびTh17依存性だがTh1依存性ではないアレルギーを発症マウスモデルの病理に有意な影響
主な研究者:
獣医学部 准教授 福山 朋季
この研究は、無機ヒ素(iAs)を口から摂取することでアレルギーの症状が悪化するかどうかを、マウスを使って調べたものです。無機ヒ素は、工業排水や汚染された水などに含まれており、体内に入ると健康への影響が懸念されています。
研究では、マウスに異なる種類のアレルギー(Th1型、Th2型、Th17型)を人工的に引き起こし、それぞれのマウスにさまざまな濃度の無機ヒ素を数日間飲ませました。その後、かゆみの強さや皮膚の腫れ、リンパ節や皮膚の炎症の程度を調べました。
その結果、無機ヒ素を摂取したマウスでは、特にTh2型(ぜんそくやアトピー性皮膚炎に関連)とTh17型(乾癬などに関与)のアレルギー症状が明らかに悪化していました。一方、Th1型(主にウイルスや細菌に対する免疫)のアレルギーには影響が見られませんでした。
さらに、低濃度のヒ素を長期間与えた場合でも、アトピー性皮膚炎やハウスダストによるぜんそくモデルで症状の悪化が確認されました。
このことから、無機ヒ素を飲み水などから摂取すると、特にTh2型やTh17型のアレルギーを悪化させる可能性があることが示されました。環境中のヒ素汚染が、アレルギー疾患の悪化に関係している可能性を示す重要な知見です。
論文タイトル:
Acute and Subacute Oral Exposure to Inorganic Arsenic Significantly Impacted the Pathology of a Mouse Model With Th2- and Th17-, But Not Th1-Dependent Allergy Development
論文掲載URL:
https://analyticalsciencejournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/jat.4786
DOI:
https://doi.org/10.1002/jat.4786