麻布大学

研究・産学官連携COOPERATION

加齢マウスにおける局所リンパ節試験で検出された化学物質の感作能に対する老化の影響

主な研究者:
獣医学部 准教授 福山 朋季

この研究は、「年を取ると体が化学物質にどう反応するか」を調べたものです。これまでの毒性試験は、若くて健康な動物を使うことが多く、その結果を人間全体に当てはめてきました。しかし、高齢になると免疫力など体の働きが変わるため、同じとは限りません。そこで研究者たちは、皮膚が化学物質に反応してアレルギーのような症状を起こすかどうかを、異なる種類や年齢のマウスで比較しました。

実験では、特定の香料成分(α-ヘキシルシンナムアルデヒド)を使い、皮膚への影響を測る方法(LLNA試験)で反応を調べました。その結果、若いマウスでは多くの系統で陽性反応が出ましたが、老化を早める特徴を持つマウス(SAMP1)や高齢マウス(80週齢)では反応が弱く、基準を満たしませんでした。さらに、免疫細胞の増殖や関連する物質(サイトカイン)の変化も確認されました。

このことから、高齢や老化の進行は皮膚が化学物質に反応する力を弱める可能性が示されました。つまり、若い動物で得られた毒性データだけでは、高齢者への安全性を十分に評価できないかもしれず、今後は加齢の影響を考慮した研究が必要だといえます。

論文タイトル:
Influence of senescence on the sensitization potential of chemicals detected by local lymph node assays in aged mice

論文掲載URL:
https://academic.oup.com/toxres/article-abstract/14/4/tfaf110/8220824?redirectedFrom=fulltext&login=true

DOI:
https://doi.org/10.1093/toxres/tfaf110