【論文】牛の乳房炎原因菌に"現場で使える"薬剤感受性判定基準を~簡易ディスク拡散法における薬剤感受性のブレイクポイント策定と日本のアンチバイオグラムの特徴の解析
主な研究者:
獣医学部 教授 河合 一洋
牛の乳房炎は発生率が高く、廃棄乳や抗菌薬使用などによって大きな経済的損失をもたらしています。乳房炎の治療には抗菌薬が用いられていますが、日本では牛乳房炎の原因菌を対象としたディスク拡散法(感受性試験)の判定基準が十分に整備されていません。そこで本研究では、臨床現場で実施しやすい簡易ディスク拡散(ADD)法を用い、牛乳房炎原因菌に対する薬剤感受性のブレイクポイント(感受性/中間/耐性を判定する境界値)を設定し、それに基づくアンチバイオグラム(地域・菌種ごとの感受性状況の一覧)を作成しました。
本研究では、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)、Streptococcus uberis、S. uberis以外のレンサ球菌(Streptococcus spp.)、およびKlebsiella属菌について、簡易ADD法に対応した新しいブレイクポイントを策定しました。さらに、既報のレンサ球菌およびE. coli(大腸菌)に対するブレイクポイントについても、再検証して妥当性を確認しました。
作成したアンチバイオグラムの解析では、東日本におけるS. uberis以外のレンサ球菌のマルボフロキサシンに対する感受性率が、北海道および西日本より有意に低いことが示されました。また、東日本におけるE. coliのオキシテトラサイクリンに対する感受性率も、北海道より有意に低い結果となりました。
これらの結果から、簡易ADD法のブレイクポイントを臨床現場で活用することで、抗菌薬の慎重使用(必要最小限で効果的な選択)を促進できると考えられます。また、全身症状を伴う急性乳房炎など、感受性試験の結果を待たずに抗菌薬を投与せざるを得ない状況では、このアンチバイオグラムが薬剤選択の判断基準として役立つと考えます。
論文タイトル:
Simplified-agar disk diffusion method for epidemiological breakpoint determination and characterization of antibiograms of bovine clinical mastitis-causing bacteria in Japan
論文掲載URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjvr/73/3-4/73_59/_article
DOI:
https://doi.org/10.57494/jjvr.73.3-4_59








