麻布大学

研究・産学官連携COOPERATION

【論文】外来の毒グモはどこから来た?遺伝子で迫る侵入ルート

主な研究者:
生命・環境科学部 准教授 片平 浩孝

この研究は、特定外来生物のハイイロゴケグモについて、どこから来たのか、どのように広がっているのかを遺伝子を使って調べたものです。

本種は神経毒を持ち、人がかまれると痛みや体調不良を起こすことがあります。1995年に神奈川県の横浜市本牧公園において最初の国内侵入が報告され、以降、関東以西の主要な港湾や離島を中心に侵入および定着が記録されてきました。しかし、近年、関東内陸部の相模総合補給廠周辺で多数の営巣が発見され、今後の広がりが心配されています。

今回、研究室の学生さんたちが力を合わせて東京都と神奈川県で99匹を集め、遺伝情報(DNA)の一部を分析しました。その結果、このクモには大きく2つの遺伝的なグループ(系統)があることが分かりました。一つのグループは、起源となる南アフリカや、世界各地の定着地から見つかっている既知の遺伝子型に近しい配列情報を持っていました。もう片方のグループは、これまで知られていなかった古い祖先的な系統でした。

本種の発見が相次いでいる神奈川県相模原市では、これら2つのグループを含む多様な遺伝子型が確認されました。すなわち、当該地域への侵入は1回ではなく複数回あった可能性や、一度に多くの個体が持ち込まれた可能性が考えられます。

この研究は、外来種の侵入ルートとして、陸と海の物流拠点だけでなく、空のロジスティクス(兵站)に目を向けるきっかけになると捉えています。なお、ハイイロゴケグモは世界的にもよく知られた外来種ですが、意外にも遺伝情報は不足しています。詳しい侵入経路解明のためには、原産地や各国の定着集団を対象とした国際的な調査が望まれます。

論文タイトル:
Multiple genetic lineages of the invasive brown widow spider (Araneae: Theridiidae) from inland areas in the Kanto region, Japan

論文掲載URL:
https://academic.oup.com/jme/article-abstract/63/3/tjag077/8703068?redirectedFrom=fulltext

DOI:
https://doi.org/10.1093/jme/tjag077